アメリカ映画。1924年作品。エルンスト・ルビッチ監督。ウィーンを舞台に、富裕階層の2組の夫婦と一人の独身男が織りなす愛と嫉妬(しっと)と行き違いを、洗練されたユーモアで描いたサイレント・コメディ。数々の歴史物大作でドイツ映画を世界に知らしめたエルンスト・ルビッチがアメリカに渡り、ハリウッドにヨーロッパ風のソフィスティケートされた笑いを定着させた記念碑的傑作。ルビッチはチャップリンの『巴里(パリ)の女性』(1923)に触発されて、人間の微細な心理やそのずれから生じるほろ苦いアイロニーを、適確な映像演出で表現することに成功した。こうした彼独特のユニークな演出法は「ルビッチ・タッチ」とよばれ、内外の多くの映画人の尊敬を集めた。当時の日本の若き映画監督、小津安二郎(おづやすじろう)や成瀬巳喜男(なるせみきお)も、フィルムをじかに手にとって、この映画の編集法を学びとったといわれている。
[宮本高晴]
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...