改訂新版 世界大百科事典 「織傭の変」の意味・わかりやすい解説
織傭の変 (しょくようのへん)
1601年(万暦29)に絹織労働者(織傭)を主体として,中国の蘇州でおこった民衆の反税闘争。宋・元時代以来,蘇州では絹織物業が発達し,17世紀初めには,民営の機戸だけで数千戸,織工と染工はおのおの数千人を数えるにいたった。これに対し,財政不足に悩む明朝は,宦官を派遣して徴税を強化しようとした。蘇州と杭州を担当したのは織造太監孫隆であるが,孫一味による収奪に反対して,6月3日,2000余人の労働者は行動をおこし,規律正しい組織的な闘争をくりひろげ,孫隆の追放に成功するとともに,重税で倒産にひんしていた機戸のために減税をかちとって,都市手工業労働者の力量を示した。事件後,首謀者として自首,のちに釈放された葛成は葛賢として尊敬され,彼の墳墓は今も蘇州に存在する。織工を主力としたこの闘争は,ひろく民衆の参加があり,また知識人層からも支持され,この時期に頻発した民変の典型的な事例とされる。
執筆者:寺田 隆信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報