寺田(読み)ジデン

デジタル大辞泉 「寺田」の意味・読み・例文・類語

じ‐でん【寺田】

奈良・平安時代、寺院の所有した不輸租田。仏事や寺院の経営などの費用に充てた。

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精選版 日本国語大辞典 「寺田」の意味・読み・例文・類語

じ‐でん【寺田】

  1. 〘 名詞 〙 令制で、寺院の所有した田地。布薩戒本田、出家得度田放生田、長生田などの種類がある。この田地は、不輸租田であった。
    1. [初出の実例]「凡田。六年一班。〈神田寺田。不此限〉」(出典令義解(718)田)

てら‐だ【寺田】

  1. 〘 名詞 〙 寺院に所属する田地。
    1. [初出の実例]「今も猶てら田にたてるそほずかな秋はてぬべき世とはみながら〈藤原為家〉」(出典:新撰六帖題和歌(1244頃)二)

てらだ【寺田】

  1. ( 「てらた」とも ) 姓氏一つ

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日本歴史地名大系 「寺田」の解説

寺田
てらだ

現立山町寺田を遺称地とする。至徳元年(一三八四)一一月三日の太政官牒と官宣旨(ともに鹿王院文書)をもって、岩峅いわくらなどとともに立山寺領の一所として京都の十刹宝幢ほうとう寺の開山堂である鹿王ろくおう(現京都市右京区)の所領となり、役夫工米以下の段銭など臨時課役を免除されている。立山寺領の鹿王院領化は、寺田などの給主が桃井直常方に荷担して反幕府行動を展開し、結果として行われた闕所地処分に伴うものである。

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改訂新版 世界大百科事典 「寺田」の意味・わかりやすい解説

寺田 (じでん)

寺院の所有する田地で,食封(じきふ)とともに寺院を維持する経費にあてられる。令制以前から存在したが,律令制下では一般の田地と異なって,収授の対象から除かれている。令では官人・百姓が,田宅・園地を寺に布施または売買することを禁じたが,寺院が寺田を売ることは認められた。《令集解》にみえる明法家の古記説(大宝令を注釈した説)によれば輸租田とするが,田租は寺院の収入になり,実質的には不輸租田と同じである。〈民部例〉《延喜式》などでは不輸租田の中に入れられる。ただし,国家から寺田と認定された田が不輸租田であり,個人の施入や寺院の開墾した田地がすべて不輸租田になるのではない。田地が荒廃化した際の借佃は,公田として扱われた。寺田は自家労働力による耕作や,雇傭による直接的経営も存在したが,一般的には荘園周辺に住む農民の賃租で耕営された。初期荘園と呼ばれる膨大な墾田の開発が進行するのは,749年(天平勝宝1)に諸寺の墾田地の面積額が定まってからである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寺田」の意味・わかりやすい解説

寺田
じでん

仏教寺院が所有した田地をいい,施入,賜与,買入れ,自力での開墾などによって寺院の所有地となった。 (1) 中国では,唐代両京の悲田養病坊に寺田 10頃 (けい) を給したいという例がみえ,宋代にはますます盛んとなり,福建では寺田が土地の大半を占め,福建の 漳州では7分の6が寺田であったという。浙江でも明州の阿育王寺,径山寺などは数万頃,台州には 1000畝以上の寺が 27寺あったという。しかし一般には 10~20頃と考えられている。荘園として経営されることが多かったようだ。 (2) 日本においても古代律令制下,寺院は国家から厚い保護を受け,不輸租田として租税を免除されていた。そのため輸租田である墾田寄進田も次第に寺田として不輸租化したため,荘園成立一因となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寺田」の意味・わかりやすい解説

寺田
じでん

古代から中世にかけて存在した寺院の所有田。その起源は大化(たいか)(645~650)前代にさかのぼり、大化以後は国家の厚い保護を受け、班田収授制のもとでは収授の対象から外され、また不輸租田(ふゆそでん)とされた。寺田が不輸租田となったのは、寺院が国家の機関とみなされていたからであると思われる。令(りょう)の規定では、官人や百姓が寺院に田地を施入・売与することは禁じられていたが、墾田永年私財法発令(743)以後、寺院は開墾・買得などにより積極的に寺田の拡大を図った。不輸租田としての寺田は、国家機関としての寺院が活動するために要する寺田に限られていたが、寺院はそれを中核に新規水田にまで不輸租田を増やし、それが寺領荘園(しょうえん)成立の一要因となった。

[村山光一]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「寺田」の解説

寺田
じでん

律令制で班田収授の対象外とされた寺院の永代所有地。寺院の建築が盛んになってから,その経費や維持費を補うために設置された。律令制以前の成立。713年(和銅6)に改正された諸寺の「田記」には,寺田の所在・田積が記されている。不輸租田で租は寺に入る。古い寺田は直営方式だったらしいが,新しいものは賃租により経営された。のち寺領と混同されるが,律令制当初から存在していたものと,官省符荘として認定されていたものが正式な寺田である。

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旺文社日本史事典 三訂版 「寺田」の解説

寺田
じでん

律令制下,寺院に与えられた田地
不輸租田で,個人の寄進や墾田開発,買得などにより急速にふえ,政府の制限も効果なく,荘園制発達の一因となった。

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世界大百科事典(旧版)内の寺田の言及

【官省符荘】より

…政府が,太政官符や,それをうけた民部省符を下して(これらを総称して官省符という),荘園の永代領有と,その田地からほんらい国に納めるべき租税を免除される不輸の特権とを公認した荘園。特定の神社・寺院に所有が認められた神田寺田は,律令国家の初期にはまだ正式な不輸租田でなかったが,8世紀中期,天平宝字年間のはじめごろ,神田・寺田は公田として取り扱われるようになり,正式に不輸租田となった。そこで政府は,神田・寺田を官省符で不輸租荘園として公認する手続をとったのが,官省符荘のはじまりである。…

※「寺田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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