繰延資産繰延負債(読み)くりのべしさんくりのべふさい(その他表記)deferred asset, deferred liability

改訂新版 世界大百科事典 「繰延資産繰延負債」の意味・わかりやすい解説

繰延資産・繰延負債 (くりのべしさんくりのべふさい)
deferred asset, deferred liability

本来は費用もしくは収益としての性質をもつものであるが,期間損益計算のしくみのうえから,経過的に貸借対照表資産項目もしくは負債項目として処理されたものをいう。

 繰延資産は,ある支出が行われ,またそれによって役務の提供を受けたにもかかわらず,その支出の効果もしくは役務の有する効果が当該期間だけではなく,次期以降にわたると予想される場合に,次期以降の収益に合理的に負担させる費用として計算すべく繰り延べるために,経過的に貸借対照表の資産の部に計上したものである。商法には,とくに貸借対照表の資産の部に掲記することが認められているものとして,創立費,開業準備費,新株発行費社債発行差金社債発行費,開発費・試験研究費,建設利息の繰延資産が列挙されている(286条,286条ノ2~5,287条,291条)。これらの繰延資産は,いずれも3年ないし5年内(社債発行差金については社債償還期限内)の毎決算期に,均等額以上を償却(当該期間の費用として計算すること)することが要求されている。しかし,繰延資産は本来的には費用であり,財産的価値を有するものではないことから,繰延経理を行い貸借対照表上,資産に計上するか否かは会社の任意とされ,資産に計上した場合でも早期に償却することが望ましいとされる。また,開業準備費,開発費・試験研究費の合計額が法定準備金の金額を超える場合には,その超過額は商法上,配当にあてることはできないとされている。

 繰延負債は,それが発生する以前に受け取ったかあるいは記録された収益をいう。この場合の収益はふつう,継続する役務の提供にかかわるもので,その発生は時間の経過に伴うものであることが多い。たとえば,前受賃貸料,前売運賃等がその例であり,これらは次期以降における役務の提供に伴って収益として発生していくものであるから,次期以降の収益として処理するために繰り延べる。かかる収益の繰延部分を繰延負債という。したがって,それは本来の意味からする負債とは区別して考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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