準備金(読み)じゅんびきん

精選版 日本国語大辞典 「準備金」の意味・読み・例文・類語

じゅんび‐きん【準備金】

〘名〙
① ある目的にあてるため、または将来の必要に応ずるために準備する金。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉七「三人併せてオンリー〔たった〕一円六十三銭といふ准備金(ジュンビキン)だらうじゃないか」
② 企業が、将来の必要に備えるために積み立てておく利益金の一部。資本欠損を補填するための利益準備金などの法定準備金と任意に利益留保する任意準備金とがある。剰余金積立金
商法(明治三二年)(1899)一九四条「会社は〈略〉準備金として其利益の二十分の一以上を積立つることを要す」
③ 将来発生すべき損失に備えるため、または将来確定すべき損失にあてるための準備額。引当金
④ 特に保険会社で、責任準備金のことをいう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「準備金」の意味・読み・例文・類語

じゅんび‐きん【準備金】

なんらかの目的に充てるために準備しておく金。
株式会社における資本準備金利益準備金、および相互会社における損失塡補てんぽ準備金。→法定準備金

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「準備金」の意味・わかりやすい解説

準備金
じゅんびきん

準備金という用語はいろいろな意味に用いられるが、企業会計においては次の三つをさして用いられる。(1)資本準備金(会社法445条3項)、(2)利益準備金(会社法445条4項)、(3)租税特別措置法上の準備金(価格変動準備金、海外投資等損失準備金など)。資本準備金と利益準備金は、会社法でその積立てが義務づけられており、法定準備金とよばれる。資本準備金は、株式の発行価額の2分の1までを積み立てることができる。また、剰余金の配当をする場合には、配当の10分の1の金額を資本準備金または利益剰余金として資本金の4分の1に達するまで計上しなければならない(会社法445条4項、会社計算規則22条)。

 これらの準備金の会計上の性質はそれぞれ異なっているが、複式簿記の構造から考えると、これらはいずれも貸方項目であり、当該金額だけ不特定の資産が留保されていることを意味する。ただしそれは、現金や預金が具体的に準備金として確保されているということではない。租税特別措置法上の準備金は、会計上は利益留保の性格をもつので利益処分による設定が適切な処理となるが、この場合、これらの準備金は任意積立金となる。ただし、租税特別措置法などの特別法上の準備金は、その計上が会社の任意ではなく、法令で定められたものであるので、負債の部の次に別の区分を設けて表示することも認められている(会社計算規則119条)。

[宮崎 徹・中村義人 2022年11月17日]

『EY新日本有限責任監査法人編『現場の疑問に答える会計シリーズ7 Q&A 純資産の会計実務』(2019・中央経済社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「準備金」の意味・わかりやすい解説

準備金
じゅんびきん
reserve

法律の規定により貸借対照表上の純資産の部に計上することを要する計算上の金額。資本準備金利益準備金の総称(会社法445条4項)。株式会社の設立または株式の発行の際に株主となる者が会社に対して払い込みまたは給付した財産の額の 2分の1をこえない額は,資本金とせずに資本準備金とすることができる(445条2,3項)。また,準備金が資本金の 4分の1に達するまでは,その他利益剰余金を原資とする配当金額の 10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てなければならない(445条4項)。会社は,(1) 欠損填補のほか,(2) 資本金への組み入れなどのために準備金の額を減少させることができるが,この場合原則として株主総会の決議を要する(448条1項)。また (1)および (2)以外の場合,減少した準備金の額は,その他資本剰余金あるいはその他利益剰余金に計上され,その結果株主への分配可能額が増加する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版 「準備金」の意味・わかりやすい解説

じゅんびきん【準備金】

会社の純資産額が資本額を超える額のうち,利益として配当することなく会社に留保する金額をいう。積立金または剰余金とも称されるが,準備金は利益の算出に当たり純資産額から控除されるべき計算上の数額にすぎないのであって,特別の具体的な財産をいうのではない。これには,法定準備金と任意準備金がある。以下,株式会社の場合を中心に説明する。 法定準備金は,資本の欠損塡補の目的をもって法律が積立てを命ずる準備金であり,商法が準備金というときは,法定準備金をさす。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

今日のキーワード

暖冬

冬期3カ月の平均気温が平年と比べて高い時が暖冬、低い時が寒冬。暖冬時には、日本付近は南海上の亜熱帯高気圧に覆われて、シベリア高気圧の張り出しが弱い。上層では偏西風が東西流型となり、寒気の南下が阻止され...

暖冬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android