改訂新版 世界大百科事典 「羊頭窪遺跡」の意味・わかりやすい解説
羊頭窪遺跡 (ようとうわいせき)
Yáng tóu wā yí zhǐ
中国,遼寧省遼東半島の先端の渤海に面した鳩湾内にある石器時代の遺跡。ヤントウワ遺跡ともいう。半島状に突き出た山塊の斜面にあり,1933年浜田耕作らによって発掘された。表土下の黄色土と貝層が遺物包含層で,住居址も3基出土している。住居址の基部は,ケイ岩の割石を石積みしたもので,9.80m×6.10m以上の長方形をなす。住居址のそばには60cm大のケイ岩を数個集積した炉址も出土している。マンシュウジカ,タヌキ,サギ,ヒラメ,サワラ,カキ,アサリ,アワビなどの出土は狩猟,漁労の痕跡を示すが,石庖丁の出土も多く農耕も活発であった。犬,豚の飼養もみられる。石器には各種石斧,石槍,石鏃,石庖丁,紡錘車,骨角器には釣針,針,骨管,尖頭器,鑽・灼痕をもつ卜骨があるほか,青銅片が1片出土している。黒陶系,褐色系の土器には壺,碗,豆が多く,質は厚手で粗末な黒色系の土器には鬲(れき),鼎(てい)があり,彩文土器もある。
執筆者:下條 信行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報