形態が刀剣類に類似した縄文時代後期・晩期の磨製石器と,東アジアにみられる金属製の剣を模倣した〈磨製石剣〉とに分かれる。
(1)縄文時代の石剣は広義の石棒に属し,その区別はあいまいである。長さ20~40cm,断面が紡錘形をなす扁平な棒状石器で,先端がとがる。同様の平面形で断面が楔形を呈し,一側縁にだけ刃がつくものは石刀として区別する。石剣には一端に瘤状の頭部がつくものが多く,とくに瘤状頭部に土器と同じ文様を彫刻したものが晩期の東日本で盛行する。瘤のない頭部に線刻施文した石剣もあり,西日本の晩期前半に多い。石剣は出自からみて剣ではなく,特定の人が所持した祭器であろう。(2)磨製石剣は,剣把をつけた銅剣を模した有柄式石剣,細形銅剣の剣身を模した有茎式石剣,剣身の断面が菱形をなす鉄剣形石剣に大別できる。有柄式石剣は朝鮮半島で遼寧式銅剣との共伴例があり,最も古い。日本でも弥生時代の最初期に出現する。支石墓の副葬品として用いた例が多く,南朝鮮,北九州に主として分布する。有茎式石剣は剣身にある樋の有無で有樋式と無樋式とに分かれる。有樋式は朝鮮半島の大同江流域と弥生時代中期の近畿地方に多く分布し,無樋式は中国,ロシアの沿海州,朝鮮に分布する。鉄剣形石剣は南朝鮮と西日本に多く,日本では弥生時代前期末ごろに出現する。磨製石剣の一部は実用の剣であるが,祭器化したものが多いと考えられる。
執筆者:泉 拓良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
縄文時代後期から晩期の磨製石器の一つ。石棒に似て棒状を呈し、断面が楕円(だえん)形で一端に瘤(こぶ)状の頭部がつき、先端がとがっているものが一般的である。瘤状の頭部にはS字状入組(いりくみ)文、渦巻(うずまき)文、綾杉(あやすぎ)文、工字文などの文様が施されるものもある。東日本一帯に分布し、全国的に点在する。とくに北海道南西部から東北地方北部にかけて濃い分布を示し、頭部に文様の施されるのもこの地域のものに多い。しかし、名称からただちに機能を類推することはできない。日常の生産活動などに直接関係するものではなく、非実用的な道具として使用されたと考えられる。緑泥片岩(りょくでいへんがん)、粘板岩(ねんばんがん)製のものが多い。
[冨樫泰時]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
剣形の石製品。一端に柄頭(つかがしら)状の頭部をもち,断面は楕円形または凸レンズ状で,両刃となっている。縄文後・晩期に東日本を中心に分布。石棒(せきぼう)から分化したものと考え,広義の石棒ととらえる説もある。弥生時代の石剣はとくに磨製石剣とよび区別する。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…形態が刀剣類に類似した縄文時代後期・晩期の磨製石器と,東アジアにみられる金属製の剣を模倣した〈磨製石剣〉とに分かれる。(1)縄文時代の石剣は広義の石棒に属し,その区別はあいまいである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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