黒陶(読み)こくとう(英語表記)hēi táo

精選版 日本国語大辞典 「黒陶」の意味・読み・例文・類語

こく‐とう ‥タウ【黒陶】

〘名〙 中国山東省、遼東半島河南省東部などを主として広く中国各地から出土する黒色土器。薄手で、ろくろ目があり、表面を磨いて光沢を出したもの。器形は壺をはじめ各種があり、殷周青銅器の源と思われる三脚器もある。龍山文化新石器時代晩期)に含まれる。黒色磨研土器

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デジタル大辞泉 「黒陶」の意味・読み・例文・類語

こく‐とう〔‐タウ〕【黒陶】

中国新石器時代、竜山文化期に盛行した黒色土器。ろくろで成形し、表面を研磨して光沢を出したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「黒陶」の意味・わかりやすい解説

黒陶 (こくとう)
hēi táo

中国考古学で土器を区別する用語。広義には土器の表面が黒色を呈するものの総称で,新石器時代の各時代にある。狭義には炭素を吸着させた黒色の土器をさし,主として,ろくろによってつくる竜山文化の黒陶をいう。かつて,中原地方の仰韶文化を代表する彩陶に対して,山東地方の竜山文化を代表する黒陶という認識から竜山文化を黒陶文化と呼んだこともある。しかし,竜山文化の内容が各地で異なり,必ずしも黒陶が中心にならない地域もあることから現在では黒陶文化とはいわない。

 山東半島で発達する大汶口(だいぶんこう)文化の後期では,芯が赤色あるいは灰色で表面のみが黒色を呈する黒陶に混じって,純黒の黒陶が少量出現する。それはろくろ回転によってつくられたもので,1.5~2.0mmという極薄のもので,表面を磨きあげて光沢を発している。台付杯など小型器にかぎられるが,これが山東竜山文化の黒陶の祖型である。山東竜山文化では黒陶が盛行し,灰陶と折半する割合で存在する。精選した胎土を用いた細泥黒陶と砂粒などの混和剤を混じえる夾砂黒陶とに大別されるが,ともにろくろ整形を主とし,表面に磨きをかけている。装飾としては,ろくろ回転を利用した凹線文や凸線文が一般的であり,胎土の生乾き状態で器壁に直線・斜線・三角文などをほどこした暗文,あるいは篦(へら)描き文もみられるが,概して簡潔に仕上げている。山東竜山文化の黒陶は,河南竜山文化,良渚(りようしよ)文化,屈家嶺文化,大渓文化など中国各地の土器に影響を与えた。

 河南・山西・河北省などの戦国時代の墳墓から黒陶製の明器が発見されることがある。銅製の容器をまねたものでは,黒陶の生地(きじ)に幾何学文や動物文の暗文あるいは黒漆をくわえて装飾的な効果をあげている。一方,黒陶製の小型俑は,極端に細部を省略したもので,漆黒で素朴な美しさをたたえている。
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百科事典マイペディア 「黒陶」の意味・わかりやすい解説

黒陶【こくとう】

中国の新石器時代の黒色土器。彩陶に続いて出現する。黒陶を出土する典型的な遺跡には山東省歴城県竜山鎮城子崖遺跡と日照県両城鎮遺跡など竜山文化の遺跡が多く,黒陶文化は竜山文化の代名詞にもなっている。焼成法など技術的には彩陶と同じだが,土器は表面と内側が黒く,胎土の内部は灰白色,表面を研磨したものが多く,一般に薄手。器形は壺,杯,高坏,鉢,皿,盤,【か】など非常に複雑で,青銅容器(青銅器)との関係を示す器形もみられる。
→関連項目仰韶遺跡屈家嶺遺跡

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒陶」の意味・わかりやすい解説

黒陶
こくとう

中国、新石器時代晩期の竜山(りゅうざん)文化期に盛行した黒色土器。新石器時代における土器の主体は、仰韶(ぎょうしょう)文化期の末から、続く竜山文化期にかけて、酸化炎焼成の紅色系土器(紅陶)から還元炎焼成の灰色系土器(灰陶)へと変化した。黒陶は、広くは灰色系土器に属し、土器焼成の最終段階において、いぶしなどの方法により、土器を強い還元状態に置き、炭素粒子を器面に沈着させて黒色化の処理を行ったものである。単に黒色の土器は中国に広く分布するが、典型的ないわゆる黒陶は、東方の黄河、揚子江(ようすこう)下流地方で生まれ発達したもので、同地方の竜山系文化を特徴づけている。その成形法はろくろびきが主で、胎土は緻密(ちみつ)な泥質である。土器の表面は磨研された無文のものが多く、弦文、へら書き文などもみられる。器種は、高坏(こうはい)、杯、鉢などの盛器・飲器が中心で、煮炊器は少ない。このうち、山東竜山文化に流行した、薄手づくりの器壁から卵殻陶とよばれる漆黒色の磨研土器は、その技術的にもっとも熟達した精美な作品である。

[西江清高]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒陶」の意味・わかりやすい解説

黒陶
こくとう
Hei-tao

中国,先史土器の一種。彩陶に次いで出現する。当初,山東省竜山鎮城子崖遺跡から発見されたので,この土器によって代表される文化を竜山文化という。黒陶は胎土精良,内外面とも黒色を呈し,表面は研磨され,かつ,轆轤 (ろくろ) 使用の痕跡がある。黒陶のうちにはごく薄手のものがあって,卵殻土器と呼ばれる。また黒陶の一部には,器形上明らかに殷代の青銅器との関連を思わせるものがある。分布は黄河下流域を中心とし,北は遼東半島,西は甘粛,南は福建まで広がる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「黒陶」の解説

黒陶(こくとう)

中国山東省の城子崖(じょうしがい)で最初に発見された新石器時代の漆黒色土器。精質粘土を用いた薄手,ろくろ製で器形は多種。黒陶を含む文化遺跡(黒陶文化,竜山(りゅうざん)文化)は山東を中心に東部中国に分布する。

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旺文社世界史事典 三訂版 「黒陶」の解説

黒陶
こくとう

中国で新石器時代に使用された黒色土器
1930年山東省竜山鎮城子崖 (じようしがい) の遺跡から出土したのをはじめ,南満州から長江流域にかけて発見された。薄手でロクロを使用し,表面は磨かれており,三足土器など多様な形がある。中国新石器時代末期から金石併用期の文化型式を象徴している。

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世界大百科事典(旧版)内の黒陶の言及

【土器】より

…ただし不完全燃焼の状況が生じると,くすんだ色に仕上がる。焼成の最終段階に意図的にくすぶらせたり(中国の新石器時代竜山文化の黒陶),焼成直後の土器を籾殻の山に埋めたり板の上に伏せたりすると,炭素やタールの粒子が小さな孔を満たし,黒く緻密な土器に仕上がる。 焼成の初段階に酸素を十分に供給し,途中でこれを断つと,一酸化炭素の多い炎(還元炎)となり,製品は灰色に仕上がる。…

【明器】より

…それには実際の器物が視覚的に表現されており,人や禽獣の形をかたどった俑(動物を土でかたどったものを泥像ともいう)あるいは壁画,画像石などとともに,往時の生活風俗を知るうえで貴重な資料になっている。 新石器時代後期の竜山文化に属する墓から,一般の陶器とは異なった特殊な形をとる黒陶が多数発見される。埋葬用につくられた可能性が強いが,実用器とはっきりと区別することはできない。…

【竜山文化】より

…中国,黄河中下流域の新石器時代後半期の文化。初め,山東省歴城県竜山鎮城子崖の発掘によって得た黒陶を特徴とする文化とされたが,新中国建設後の黄河中流の調査によって2系統の竜山文化があることがわかり,以後山東省のそれは山東竜山文化,または典型竜山文化と称されるようになった。 黄河中流の竜山文化は陝西,河南,山西南部,河北南部,安徽北西部に広がり,仰韶(ぎようしよう)文化より興ったものである。…

※「黒陶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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