美・細・妙・詳・委・精(読み)くわしい

精選版 日本国語大辞典 「美・細・妙・詳・委・精」の意味・読み・例文・類語

くわし・い くはしい【美・細・妙・詳・委・精】

〘形口〙 くはし 〘形シク〙
[一] (美・細・妙) こまやかで美しい。精妙である。うるわしい。
書紀(720)欽明一三年一〇月(寛文版訓)「朕昔より来(このかた)、未だ曾(かつ)て是の如く微妙(クハシキ)(のり)を聞くこと得ず」
万葉(8C後)一三・三三三一「忍坂(おさか)の山は 走り出の よろしき山の 出で立ちの 妙(くはしき)山ぞ」
[二] (詳・委・精)
① 細かい点にまでゆきわたっているさま。詳細である。つまびらかである。つぶさである。
※書紀(720)垂仁二五年一〇月(熱田本訓)「神祇を祭祀りたまふと雖も、微細(クハシク)は未だ其の源根(もと)を探(さく)りたまはずして」
源氏(1001‐14頃)帚木「いもうとの君の事もくはしく問ひ給ふ」
② 細部まで十分に知っているさまである。精通しているさまである。
※談義本・風流志道軒伝(1763)一「しかれども我若年にして人情に精(クハシ)からず」
[語誌](1)(一)の用法は単独では少なく、「うらぐはし」「まぐはし」「かぐはし」など、複合形容詞として多く用いられる。
(2)上代には「詳細」「委細」の意を表わす語として「つばら」「つぶさ」などが行なわれていたが、これらは平安時代以降「つばひらか」(鎌倉時代以降は「つまびらか」になる)などとともに、漢文訓読の世界で用いられるようになり、和文ではもっぱら「くはし」を使うようになった。
(3)類義語の「こまか」は、事物の微細な、あるいは濃密なさまを具体的にとらえていう語で、ときに情愛配慮といった心理に裏打ちされて使うのに対して、「くはし」は理解判断にあたってくまなく十全な材料を得ている、あるいはそれを提示しているという状態を表わす。

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