日本大百科全書(ニッポニカ) 「老人室」の意味・わかりやすい解説
老人室
ろうじんしつ
老人は一般に、身体的には衰えがみられるものの、精神的には一徹なものをもっている。このような老人が快適な生活を送れるよう配慮した部屋をいう。
老人の交際関係は若い世代の家族とは異なるので、客に直面する玄関近くは避けたほうがよい。散歩などの出入りに自由な内玄関、勝手口近くに設けるのが望ましい。また、外気の中で軽い作業をするのはよい運動になるので、南の庭に面した位置もよい。大きく障子を開けられるようにしたり、テラスや濡(ぬ)れ縁(えん)を設けて庭へ出やすいように配慮したい。また、老齢になると用便が近くなるので、便所が近くにあるほうがよい。付属するものとしては、床(とこ)、仏壇、押入れなどがあるが、一部屋できちんとまとまった生活をするのだから、これらは通常よりも圧縮した形とし、仏壇を床の間の一部にはめ込みにしたり、押入れを細分して整理しやすくするなどのくふうが必要である。
視力が衰えてくるので照明は比較的明るめにし、室内にはあまり器物を置かないよう気を遣いたい。生活活動が少ないので、六畳の面積があれば十分である。老人は、たとえ健康でも血圧が高く心臓も弱っているため、冬の寒さ、とくに明け方の冷えには注意が必要である。温水暖房や温気暖房で夜中一定の温度に保てれば理想的だが、身近な暖房器具としては電気ごたつがよい。
[中村 仁]