日本大百科全書(ニッポニカ) 「聶耳」の意味・わかりやすい解説
聶耳
にえある
(1912―1935)
中国の作曲家。本名守信(シヨウシン)、号は紫芸。雲南省昆明(こんめい)の出身で、幼時から月琴(げっきん)、二胡などの民族楽器を習い、独学でピアノやバイオリンも習得した。1928年共産主義青年団に加入したが、雲南政府の弾圧で30年に上海(シャンハイ)に逃亡、31年「明月歌舞劇社」に入り楽士としてバイオリンを弾く。音楽サークル「蘇聯之友社」に加わって映画主題歌の作曲を始め、32年に聯華映画会社の音楽主任になって、聶耳のペンネームで作曲した。映画主題歌『畢業歌』『大路歌』、多数の歌曲、新歌劇『揚子江(ようすこう)暴風雨』などがある。35年、抗日運動弾圧の手がのび、ソ連留学を思い立ち、その途次日本の神奈川県藤沢市鵠沼(くげぬま)海岸で水泳中に溺死(できし)。田漢(でんかん)の歌詞による『義勇軍行進曲』(映画『風雲児女』主題歌)は、抗日戦争に立ち上がった人々の闘志を燃え上がらせ、現在でも中国の国歌として愛唱されている。
[志村哲男]