六訂版 家庭医学大全科 「肝包虫症」の解説
肝包虫症
かんほうちゅうしょう
Hydatid disease of the liver
(肝臓・胆嚢・膵臓の病気)
どんな病気か
包虫症は、エキノコックス属の
肝臓の感染では、
多包虫症は北半球の寒冷地に広く分布し、日本では北海道にみられます。一方、単包虫症は日本では極めてまれです。
原因は何か
成虫は
嚢胞の内部には多くの頭節が生じ、無数の包虫が生じます。幼虫は肝臓に入ると2~3カ月で、外側にキチン膜をもつ嚢胞を形成します。嚢胞の大きさは、10~20㎝にも達し、肝臓は腫大(はれて大きくなること)、変形してしまいます。
症状の現れ方
嚢胞の発育は緩やかです。臨床症状の発現に数十年を要し、経過は長期に及びます。上腹部
合併症としては、嚢胞内液が血中に流出し、アレルギー症状やアナフィラキシーショックがみられることがあります。
検査と診断
問診、腹部の触診、血清診断、画像診断などが行われます。血清診断にはELISA法とウエスタンブロット法と呼ばれる2つの検査方法があり、流行地域の集団検診スクリーニングにも用いられています。
腹部X線検査に加え、超音波やCTの併用によって、より正確に診断されます。腹腔鏡による肝表面の観察と、肝生検による嚢胞壁の確認によって診断は確定します。ただし、嚢胞の
治療の方法
外科的切除による多包虫の摘出が基本です。包虫駆除薬アルベンダゾールの投与など内科的治療も併用されています。早期診断された患者さんの治癒率は高くなっています。
鹿毛 政義
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報