日本大百科全書(ニッポニカ) 「肺機能検査」の意味・わかりやすい解説
肺機能検査
はいきのうけんさ
肺機能障害の有無をはじめ、どのような肺機能がどの程度障害されているのか、その障害は進行性か、また手術に耐えうるような状態にあるか、あるいは治療効果などを判定するために行われる検査をいう。肺機能検査は呼吸機能検査ともよばれ、代表的な換気機能検査をはじめ、動脈血のガス分析を基に行う肺胞機能検査や心臓カテーテル法などによる肺循環機能検査がある。
換気機能検査は、空気を肺に出入させる機能の検査で、スパイロメーターなどを用いて安静および努力呼吸時の呼吸カーブを記録し、肺の呼吸レベルと肺内空気の容積を関係づけた各肺気量分画(肺活量、予備吸気量、1回換気量、予備呼気量、残気量など)や努力肺活量、呼出開始後1秒間に呼出される1秒量などを測定する。これを基に1秒率(1秒量を努力肺活量で割る)や残気率、肺活量比などを計算し、その結果を総合して肺機能を評価する。なお、運動負荷肺機能検査は、安静時にみられない潜在的呼吸困難をみつけたり、慢性肺疾患の患者の社会復帰の評価に用いられ、また肺切除手術の適応決定には、左右別肺機能検査などを行う。
換気機能障害には拘束性障害、閉塞(へいそく)性障害、混合性障害がある。拘束性障害は、肺活量比が減少して1秒率は正常なもので、原因としては肺病変による肺の伸縮制約(肺気腫(しゅ)や肺癌(がん)など)と胸郭の運動制限(胸膜癒着など)がある。閉塞性障害は、肺活量比は正常で1秒率が低下するもので、気道の抵抗増大(気管支けいれん、腫瘍(しゅよう)やリンパ節による気管支圧迫など)が原因となる。混合性障害は、肺活量比と1秒率がともに低下しているもので、気管支喘息(ぜんそく)や気管支拡張症などでみられる。
[山口智道]