改訂新版 世界大百科事典 「脂肪体」の意味・わかりやすい解説
脂肪体 (しぼうたい)
fat body
他の組織から独立して腹腔内にある塊状の脂肪組織で,脂肪の貯蔵器官。白色ないし淡黄色をなす。哺乳類や鳥類では,脂肪組織は皮下にも発達するが,脂肪体はおもに腎臓や生殖腺に接した腹腔内にできる。両生類では,皮下脂肪組織が発達せず,脂肪体だけが生じる。有尾類(サンショウウオなど)や無足類(アシナシイモリなど)では生殖腺原基の全域から形成された細長い組織だが,無尾類(カエル)では生殖腺原基の前部(前生殖腺)から形成された掌状または房状の組織である。昆虫の脂肪体も脂肪細胞が集合した組織で,幼虫やさなぎの体腔の大部分を占める。脊椎動物では中性脂肪が主成分だが,昆虫ではこのほかに,リン脂質,タンパク質,グリコーゲンなどを多量に含み,これらの物質の代謝を行う重要な組織であるから,脊椎動物の肝臓と似たはたらきをする器官だと考えられる。
執筆者:川島 誠一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報