日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシナシイモリ」の意味・わかりやすい解説
アシナシイモリ
あしなしいもり / 足無蠑螈
caecilian
両生綱無足目に属する動物(無足類)の総称。イモリとは別の目に属し、体は細長い筒状で、四肢と肢帯を欠く。ハダカヘビともいう。多くの種では全身に多数の環状の溝があり、一見ミミズに似ている。目は小さく、皮膚の下に埋没している。目の近くに嗅覚(きゅうかく)器として機能する1対の触毛があり、体の前端下方に歯列を備えた口がある。総排出孔は体の後端近くにあるので、尾はほとんどない。皮膚の下に痕跡(こんせき)的な鱗(うろこ)をもつ種もある。体長は7センチメートルから1.5メートルに達するものまである。アジア、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカの熱帯域に分布し、日本にはいない。4科約170種が知られている。森林内の湿った地中で生活するが、一部は水中性である。
両生類としては例外的に雄に交尾器があり、体内受精をする。卵生種のほか、多数の胎生種を含むのも大きな特徴である。卵生種は地中に少数の大形卵を産み、親が卵を保護する例もある。孵化(ふか)した幼生は付近の水中に入って数週間から1~2年の遊泳幼生期を過ごすが、なかには遊泳幼生期を経ずに地上で変態する種もある。胎生種では幼生期は母体内で経過し、袋状のえらが栄養分の摂取やガス交換の役をする。このえらは出産前に吸収される。
[倉本 満]