日本大百科全書(ニッポニカ) 「脈なし病」の意味・わかりやすい解説
脈なし病
みゃくなしびょう
pulseless disease
頸(けい)動脈と橈骨(とうこつ)動脈の脈拍を触れない疾患で、1948年(昭和23)に清水健太郎(1903―87)と佐野圭司(けいじ)(1920― )が命名、発表して注目された。〔1〕上肢の脈(橈骨動脈拍動)が触れないこと、〔2〕眼底などにみられる特有な眼症状、〔3〕頸動脈洞反射(頸動脈を圧迫すると反射的に徐脈と血圧降下をきたす)の亢進(こうしん)を、脈なし病の三主徴といい、日本はじめアジア諸国の若い女性に多くみられる。成因についてはまだ不明で、病理学的には大動脈およびその主幹分岐動脈に選択的に発生する閉塞(へいそく)性血栓性動脈炎であるとされており、現在では大動脈弓症候群に総括されている。また、1908年(明治41)に高安右人(たかやすみきと)(1860―1938)が「奇異なる網膜中心血管の変化の一例」として報告し、高安動脈炎とか高安病とよばれた疾患とも同じものとされている。
[竹内慶治]