高安動脈炎(読み)たかやすどうみゃくえん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高安動脈炎
たかやすどうみゃくえん

大動脈炎症候群ともいわれ、以前は脈なし病ともいわれた。しかし、高安動脈炎は単に眼底変化や橈骨(とうこつ)動脈拍動(手首の親指側で触れる脈拍)の触知不能ばかりでなく、胸部や腹部の動脈などにも多彩な症状が発現することがわかるにしたがって高安症候群ともよばれた。現在は高安動脈炎とよぶのが正しい。

 高安動脈炎は、大動脈およびその主幹分岐動脈に狭窄(きょうさく)ないしは閉塞(へいそく)をきたす疾患の総称である。1908年(明治41)に日本の眼科医高安右人(みきと)(1860―1938)が初めて報告した疾患で、高安病あるいは脈なし病として知られた。主としてアジア諸国でみられ、20~35歳の比較的若い女性に好発する。成因はなお明らかでないが、免疫学的機序が関与するとする見解が有力である。ホルモン分泌異常を重視する意見もある。特定疾患(難病)に指定されている。

 症状として頸(けい)動脈および鎖骨下動脈の狭窄ないしは閉塞による脳、目、上肢の阻血症状、異型大動脈縮窄による下肢の血圧下降と上肢の血圧上昇、腎(じん)動脈狭窄による高血圧、頸動脈洞反射亢進(こうしん)などである。炎症の進行そのものに対しては副腎皮質ホルモン、抗凝血剤などの内科的治療を行い、固定した病変としての動脈閉塞ないし動脈瘤(りゅう)の発生に対しては外科的治療を行うのが、治療の根本方針である。

[竹内慶治]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

高安動脈炎
たかやすどうみゃくえん
Takayasu's arteritis (TA)
(膠原病と原因不明の全身疾患)

どんな病気か

 1908年に眼科医の高安右人によって報告された病気で、大動脈炎症候群ともいわれます。大動脈およびその分枝の血管が損なわれます。このためさまざまな症状が現れます。日本、東南アジアに多く、20~50歳の女性に多い(男女比1対9)ことが特徴です。

原因は何か

 原因はわかりませんが、女性ホルモン、ウイルス、遺伝要因(HLA­B52、B39)などが考えられています。

症状の現れ方

 発熱、めまい、失神発作、頸部痛(けいぶつう)、脈拍が触れにくくなる、血圧の左右差、間欠性跛行(かんけつせいはこう)(片足が正常に動かず、引きずるようにして歩く)などの症状があります。

検査と診断

 臨床症状および血液検査の所見から診断します。診断の確定は画像診断(血管造影、シンチグラフィ、CT、MRA)などによって行います。

 動脈硬化、血管ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、炎症性腹部大動脈瘤(りゅう)などを区別します。

治療の方法

 副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロン20~30㎎/日から治療を始め、徐々に減らしていきます。抗血小板療法を併用することもあります。外科的には、血管再建術、大動脈弁置換術(ちかんじゅつ)、動脈瘤置換術などが行われます。予後は改善し、5年生存率は90%前後です。

病気に気づいたらどうする

 循環器内科、膠原病(こうげんびょう)内科などを受診してください。とくに血圧に注意し、減塩食を行い、高脂血症糖尿病骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など合併症の併発を予防することが重要です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報