脱原発(読み)ダツゲンパツ

デジタル大辞泉 「脱原発」の意味・読み・例文・類語

だつ‐げんぱつ【脱原発】

原子力発電所を廃止し、核エネルギーに依存しない電力供給体制を構築すること。→卒原発減原発

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百科事典マイペディア 「脱原発」の意味・わかりやすい解説

脱原発【だつげんぱつ】

原子力発電に依拠したエネルギー政策を転換し,将来的に原発を廃棄することを求める主張。原子力発電をそもそも認めない立場である〈反原発〉と異なり,廃棄への技術的・時間的プロセス代替エネルギーについての多様な考え方を含んでいるため,政治的・社会的運動における主張として見た場合,〈脱原発〉は結集点になりにくいという批判もある。福島第一原発事故を受けて,ドイツは2022年までに,スイスも2034年までに脱原発を実現する,としているが,国家レベルでは脱原発の動きは国際的な広がりをみせていない。日本でも事故後脱原発運動は市民レベルで一時活発化したが,2012年12月の衆議院選挙では,脱原発は主要争点化せず,原発維持・推進の自民党が多数の議席を獲得した。さらに2014年2月の東京都知事選(猪瀬直樹都知事が選挙資金問題で任期途中で辞任したことにともなう)で,反原発を掲げる細川護煕元首相が,3.11福島第一原発事故以降同じく反原発を提唱する小泉純一郎の応援を得て立候補,また反原発を主要な政策課題とし,共産党・社会党などの支援を受ける宇都宮健児が立候補し,原発推進対反原発・脱原発の争点化が期待された。しかし市民運動団体による,細川陣営と宇都宮陣営の統一のこころみは成らず,反原発・脱原発の議論も活性化しないまま,自公推薦候補の舛添要一元厚生労働大臣(自身は〈脱原発〉と発言)が圧勝した。脱原発・反原発運動にとっては,原発をめぐる議論が選挙で争点化することのない日本社会の現実が再びつきつけられることとなった。ドイツをはじめ反原発・脱原発先進国の世論には,福島第一原発事故という巨大事故を経験しながら反原発運動が盛り上がらない日本社会を〈利益優先社会〉と批判的にとらえる見方が広まっている。こうしたなか2014年4月に細川・小泉両元首相は,脱原発のうねりを全国に作り出すとして,一般社団法人〈自然エネルギー推進会議〉を設立。→反原発運動

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知恵蔵 「脱原発」の解説

脱原発

欧州を中心とする脱原発への動きでは、まず1999年12月にスウェーデンが稼働中のバルセベック原発1号機を閉鎖し、2005年5月には残る1基も閉鎖。00年6月にはドイツ政府と電力会社が原発全廃に合意、03年11月に1基目を閉鎖、05年5月には2基目も閉鎖した。ベルギーでも03年1月に脱原発法が成立した。電力自由化で電気料金の低下が進み、原発が経済面から電力会社の重荷になってきたことに加えて、自然エネルギーや分散型エネルギー源の急速な普及や、緑の党の政権参加など政治的な構造変化も背景にある。一方、原子力ルネサンスと呼ばれる動きや中国など推進姿勢の国もある。日本では、1999年9月の東海村臨界事故、2000年11月の三重県海山(みやま)町(現・紀北町)の原発住民投票、同11月の静岡県浜岡原発の配管破断、02年8月に発覚した東京電力の原発トラブル隠し事件などが相次いだ。しかし、00年の原発促進法(原子力立地地域振興特別措置法)や03年のエネルギー基本計画、原子力立国計画を掲げた新・国家エネルギー戦略で、原子力を改めて基幹電源に位置付けるなど、原子力推進姿勢を維持している。

(飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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