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原子力発電 げんしりょくはつでん nuclear power generation

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

原子力発電
げんしりょくはつでん
nuclear power generation

ウラン,プルトニウムなどの核燃料の核分裂エネルギーを使って電力を得ること。発電用に設計された原子炉内に発生した熱で水を水蒸気に変えタービン発電機を回すのが普通の方式。核燃料は 1kgから発生するエネルギーが石炭約 3000tに匹敵する高密度なエネルギー源なので,補給,輸送,貯蔵などは楽である。

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デジタル大辞泉の解説

げんしりょく‐はつでん【原子力発電】

原子炉で発生した熱エネルギーで蒸気をつくり、タービン発電機を運転して発電する方法。原発(げんぱつ)。→原子炉[補説]

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百科事典マイペディアの解説

原子力発電【げんしりょくはつでん】

原子炉で発生する熱を用いた発電。天然ウラン黒鉛減速型,加圧水型,沸騰水型等の発電用原子炉の冷却材を熱交換器に導いて,できるだけ高温高圧の水蒸気を発生させ,これでタービン発電機を運転させる。
→関連項目火力発電環境難民原子力原子力製鉄原発原発事故脱原発電源三法東京電力[株]日本日本原子力発電[株]発電プルサーマル放射能汚染ユーラトム(EURATOM)

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世界大百科事典 第2版の解説

げんしりょくはつでん【原子力発電】

原子炉の熱を利用して水を蒸発させ,その蒸気で蒸気タービン‐発電機を回すことによって発電を行うこと。火力発電におけるボイラー原子力蒸気供給系nuclear steam supply system(略称NSSS)で置き換えたものと考えればよい。原子炉で熱が発生する原理はボイラーの場合と異なり,核分裂に基づくものであって,このとき熱と同時に放射線の放出があり,しかも放射性の核分裂生成物が発生する。核分裂生成物は核壊変し,これに伴う崩壊熱が長期間にわたって発生するので,原子炉停止後も崩壊熱を適切に除去してやる必要がある。

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大辞林 第三版の解説

げんしりょくはつでん【原子力発電】

核分裂による熱で水蒸気を発生させ、蒸気タービン・発電機を回して発電すること。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

原子力発電
げんしりょくはつでん

原子炉内でウランなど核分裂性物質を用いて核分裂反応(以下、核反応)を起こし、発生したエネルギーを利用して発電を行うこと。核分裂によって生じたエネルギーは原子炉内でいったん熱となり、この熱を蒸気などの形で取り出してタービン発電機を駆動する。熱を利用して発電する過程は火力発電と変わらない。つまり原子力発電所は、火力発電所のボイラー部分を原子炉に置き換え、これに放射性物質の処理施設などを付置することによって構成されているとみることができる。
 しかし、原子力発電は、炉心溶融のようなシビアアクシデント(過酷事故)を起こして重大な放射能・放射線災害をもたらす可能性がある点で、火力発電と異なる。また、使用済み燃料やそれを再処理して取り出す高レベル放射性廃棄物の処分方法も確立していない。原子力発電は、(1)シビアアクシデント発生の可能性がある、(2)放射性廃棄物処分技術が未確立である、という二つの技術的欠陥が克服されないまま実用化が進められ、日本でも大量の発電所が建設されてきたが、現在の技術状況において実用に供するには、きわめてリスクの高い技術であるといえる。[舘野 淳]

発電用原子炉

機能から見た原子炉の基本的な構成要素は、(1)核分裂を起こす核燃料、(2)核分裂によって発生した中性子を減速して核反応の効率をよくするための減速材、(3)炉心を冷却すると同時に、その熱を外部に取り出して利用するための冷却材、の三者であり、これらの組合せによってさまざまなタイプの原子炉ができる(減速材を用いず中性子を高速のまま利用するものが高速炉であるが、技術的困難性のため実用に至っていない)。
 現在実用化されている発電用原子炉には、減速材に黒鉛を用いる黒鉛炉や、重水を用いる重水炉、減速材および冷却材として軽水(普通の水)を用いる軽水炉(軽水型原子炉)がある。もっとも多く用いられているのは軽水炉で、世界の原発(以下、原子力発電炉または原子力発電所を略称して原発とよぶ)の83%(基数ベース、2006年)を占める。2013年の時点で日本にある原発はすべて軽水炉である。
 軽水炉には、原子炉内で発生した蒸気を直接タービンに導き発電を行う沸騰水型炉(BWR:Boiling Water Reactor)と、高温高圧となった一次冷却水を熱交換器(蒸気発生器)に導きそこで二次系の水を加熱して発生させた蒸気で発電を行う加圧水型炉(PWR:Pressurized Water Reactor)の2種類がある(参照)。両者に共通な構成部分として、核反応が起きて熱を発生する核燃料が詰め込まれた炉心、核反応を制御して運転の開始や停止・出力の調整を行う制御棒、これらを閉じ込めている原子炉圧力容器(内部の温度は約300℃、圧力はPWRで約160気圧、BWRで約70気圧と高圧なのでこう名づけられている)、さらに、配管や圧力容器が破損して放射性物質が漏れた場合にこれを閉じ込めるための格納容器がある。
 炉心は炉の形式・出力によっても異なるが、110万キロワット級BWRでほぼ直径4メートル、高さ4メートルの円柱形であり、5万本以上の燃料棒がびっしりと平行に置かれ、そのすきまを冷却水が流れ熱を除去している。燃料棒は、外径約1センチメートル、長さ約4メートルのジルカロイ(ジルコニウム合金)の被覆管内部に、二酸化ウラン(セラミック)のペレットを詰めたものである。原子炉運転中、炉心では核反応の熱が発生し、ペレット中心部の温度は2500℃、被覆管表面温度は350℃程度にまで上昇する。熱の発生は、制御棒が挿入されて核反応が停止しても、放射線が熱に変わるため継続する。これを崩壊熱とよぶ。地震などで制御棒が自動的に挿入され(スクラムとよぶ)原子炉が停止した場合、運転停止直後の崩壊熱は運転時の7%程度で、その後次第に減少するが、崩壊熱を除去する冷却機能が失われれば炉心溶融に至る(後述する福島第一原子力発電所事故の原因)。
 燃料棒のすきまを流れる冷却水は、炉心の冷却と発電のための蒸気の発生との二つの役割を果たしている。運転時のBWRでは、冷却水は再循環ポンプによって強制的に循環され炉心を高速で流れ熱を奪い蒸気となり、圧力容器内上部にある気水分離機を経てタービン発電機へと向かう。沸騰水型とよばれるのは圧力容器内で沸騰が生じているためである。PWRでは、圧力容器内で熱せられた一次冷却水は沸騰せずに蒸気発生器へ入る。蒸気発生器内には、高ニッケル合金(インコネル)製の蒸気細管(外径約2センチメートル)が数千本取り付けられており、この細管壁を通じて熱が二次冷却水へ伝えられ蒸気を発生し、タービンを回す。一次冷却水は圧力容器へと戻る。なお、これらの主冷却系統に加えて、事故により配管などが破断して冷却水が失われた場合に注水を行う緊急炉心冷却装置(ECCS)や、運転停止時の熱除去のための余熱(残留熱)除去系など、数多くの冷却装置が取り付けられている。
 BWRの格納容器は、PWRと比べて容積が4分の1程度と小さいため、事故の際、圧力容器から噴き出した蒸気によって耐圧限界を超え、破損するおそれがある。そのため格納容器(ドライウェル)内の蒸気を、水を張った圧力抑制室(ウェットウェル)に吹き出し凝縮させて、格納容器内の圧力上昇を抑える仕組みになっている。PWRの格納容器は初期の鋼鉄製から鉄筋コンクリート製へと材質は変化したものの、形状は円筒形でありほとんど変化していない。一方BWRの場合は、フラスコ型の格納容器とトーラス型(ドーナツ形)の圧力抑制室から、円錐形の格納容器にプール型の圧力抑制室まで、多くの形状の変遷がある。
 なお、BWRとPWRの改良型は、それぞれABWR、APWRとよばれ(Aはadvancedの略)、ABWRの柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発6号機(1996年運転開始)で出力135万キロワットと、いっそうの大型化が図られている。APWRでは、出力153万キロワットの敦賀(つるが)3号機・4号機が建設計画中である。
 原子力発電所の施設としては、このほかに、制御室を含む制御・計装施設、タービン発電機、放射性廃棄物処理施設、使用済み燃料貯蔵施設などがある。制御室には原子炉の出力を表す信号、冷却材の圧力、流量、温度、炉内水位を表す信号などが集中しており、これに基づいて原子炉の制御を行う。放射性廃棄物処理施設は、原子力発電所の運転に伴って発生する放射性のガス、冷却水の漏れや洗濯・除染廃液、さらに使用済みのイオン交換樹脂、フィルター・スラッジなど各種の放射性廃棄物を処理するために置かれている。極低レベルの廃液は環境に放出されるが、それ以外の廃液は濃縮されてアスファルトを混ぜ、固体廃棄物とともにドラム缶詰めをして敷地内の保管場所(グレーブ・ヤード)内に貯蔵される。また、一定程度(2万5000~3万メガワット・日/トン)「燃やされた」燃料は使用済み燃料貯蔵用プールに貯蔵され、その後特別な輸送用キャスクに詰められて再処理工場へと送られる。[舘野 淳]

開発の歴史

原子力発電は1950年代の初期、軍事技術の転用という形でスタートした。初めて民生用に利用されたのは旧ソ連の黒鉛炉(黒鉛減速軽水冷却型炉。オブニンスク原子力発電所、1954年運転開始)、次いでイギリスの黒鉛炉(黒鉛減速炭酸ガス冷却炉。コールダーホール発電所、1956年)であった。アメリカは原子力潜水艦用に設計された軽水炉(PWR)を改造してウェスティングハウス社が1956年シッピングポート発電所(PWR。電気出力10万キロワット)を、1957年にゼネラル・エレクトリック社がドレスデン発電所(BWR。電気出力21万キロワット)を建設した。しかしこれらは火力発電所との経済競争に打ち勝つことができず、その後15年ほどの間にきわめて急激な大型化、コンパクト化(高出力密度化)が図られ、今日の軽水炉が出現した。この急速な大型化、コンパクト化は、事故の際、熱のコントロールが困難であるという軽水炉の技術的欠陥の原因となっている。
 日本においては、1957年(昭和32)イギリスのコールダーホール炉の導入が決定され、茨城県東海村に建設され、1965年運転を開始した(1998年運転終了)。このころ、ウェスティングハウス社やゼネラル・エレクトリック社などのアメリカの企業から、「安全性が実証されている」として軽水型発電炉の激しい売り込みがあり、琉球電力公社(現、沖縄電力)を除く日本の電力各社および日本原子力発電株式会社は一斉に軽水炉の導入に踏み切った。こうして1970年3月には日本初の軽水発電炉敦賀1号が、同年11月には美浜(みはま)1号が運転を開始し、これ以降各地に次々と原子力発電所が建設されてきた。[舘野 淳]

原子力発電の安全性

原子力発電においては、平常時に関しても、発電所だけではなく、たとえばウラン採鉱時における被曝や、再処理工場からの希ガスの放出、放射性廃棄物の処理処分などを含む、トータルシステムとしての安全性が考慮されなければならないが、ここではおもに原子力発電所の事故時の問題について述べる。
 すでに述べたように、軽水炉の炉心では、きわめて高密度で熱が発生している。たとえば、直径約4.5メートル、高さ3.7メートルのBWRの炉心では、大量の熱が発生し(熱出力300万キロワット)、これを多摩川の流量と同程度の毎時5~6万トンの水で冷却している。したがって短時間でも冷却が途絶えると、たちまち炉心燃料温度は上昇して溶融に至る。
 原子力発電所の安全性が重要視されるのは、原子炉内に莫大(ばくだい)な量の放射能およびエネルギーが発生し、たとえ核反応が停止しても、これらが引き続き存在して、巨大な潜在的危険性を形づくるからである。たとえば、110万キロワット級の原発を1年間運転し停止した直後、炉心には約6×1020ベクレルの放射能が存在する。したがって、事故が発生した場合、炉内の放射能をいかに環境に漏らさないようにするか、住民が被曝しないようにするかが、安全を考えるうえでの基本である。
 原子力開発のごく初期においては、安全を保障するための手段は広い敷地をとることであった。しかし、その後、原子炉が大型化し、経済的理由から原発の都市接近が図られるようになると、緊急炉心冷却装置(ECCS)などに代表されるいろいろな安全装置が付加され、これによって立地基準の緩和が図られてきた。
 一方、開発が進むにつれて、原子炉の設計や安全審査を行うための安全概念がいろいろ提起されてきた。たとえば「多重防護」「単一故障指針」「設計基準事故」「低人口地帯」などがこれである。「多重防護」とは、(1)品質管理などを厳重にして故障が起こらないようにする、(2)故障が発生してもこれを大事故に発展させないための対策(たとえばECCS)、(3)事故の拡大を防止する対策(格納容器など)、の三重の壁からなっているとされる。さらに安全審査に際しては「重大事故」、「仮想事故」(設計基準事故ともいう)を評価の対象とする考え方がとられるようになった。これは「技術的見地から起こると考えられないような事故を想定して、その際にも敷地の外側の人が受ける被曝線量は十分小さいようにする」という考え方である(こうした過去の安全審査指針がいかに現実離れしていたかは、福島第一原子力発電所事故を見れば明らかである)。
 以上のように少なくとも設計上は安全性が確保されているはずの原子力発電に対して、その安全性が疑問視され、論争が行われてきた最大の理由は、現実に原子力発電所において、さまざまな事故・故障が発生してきたからであった。事故の原因は、機器の故障、設計不良、誤操作など多岐にわたっているが、その典型的な例として、圧力容器内壁や配管などの応力腐食割れ、蒸気発生器細管の減肉、ペレット被覆管相互作用による燃料被覆管の破損など、原子炉を構成している材料の欠陥に基づくトラブルをあげることができる。とくに応力腐食割れは、これを修理するために発電所の稼動率の低下をきたし、また補修作業が強放射線下で行われるために、従事する労働者(とくに下請労働者)の被曝を増大させ、社会的な問題となってきた(ただし、運転方法に制限を加えたり、材料の改善を行うことにより、稼動率は上昇した)。また事故に際して重要な役割を果たすはずのECCSについても、アメリカで行われたLOFT実験と称する模擬的な実験の結果、その有効性について疑問が提出された。[舘野 淳]

シビアアクシデントの発生

1979年3月28日、アメリカ、ペンシルベニア州スリー・マイル島(TMI)で発生した事故は、炉心溶融(チャイナ・シンドローム)という最悪の事態になる可能性も一時は考えられ、文字どおり世界を震撼(しんかん)させたが、同時に重大な教訓をわれわれに与えた。事故によって環境に放出された放射能は数百万キュリー(1キュリー=3.7×1010ベクレル)に上り、これは、「技術的に起こりえない」とされている「仮想事故」の場合の規模をはるかに上回るもので、半径5マイル以内の妊婦と児童の避難が行われた。原子炉は完全に使用不能となり、経済的損失は10億ドルを上回るとされている。事故に関する大統領特別調査委員会の報告(ケメニーJohn G. Kemeny報告)は、安全であると「過信」することこそ、もっとも危険な態度であるとし、行政のあり方に厳しく批判を加え、「もし企業や行政担当者が抜本的に態度を改めないならば、彼らこそが有用なエネルギー源としての原子力を手離す責任を負うことになる」と結論づけた。
 1986年4月26日、当時のソ連・ウクライナ共和国にあるチェルノブイリ原子力発電所4号炉において、原子炉の暴走により原子炉が爆発炎上し、14×1018ベクレルに及ぶ放射性物質が環境に放出されるという原子力開発史上最大最悪の事故が発生した。この事故で直接、被曝や火傷などにより31人の人命が失われ、子供の甲状腺癌(がん)を含む多くの放射線障害が発生した。事故当時周辺30キロメートル圏内の住民13万5000人が避難したが、放射能の影響は風下側にあたるベラルーシをはじめとしてヨーロッパ全土に及んだ。チェルノブイリ原子力発電所は黒鉛減速・軽水冷却圧力管チャンネル型とよばれるもので、現在広く用いられている軽水炉とは形式を異にしているが、いったん巨大事故が発生した場合いかに深刻な被害が生じるかをまざまざと見せつけられた事故であった。
 核反応エネルギーを熱エネルギーに転換する原発では、核反応エネルギーと熱エネルギーいずれの制御に失敗しても事故が発生する。チェルノブイリ事故は核反応エネルギーの制御に失敗した反応度事故(暴走事故)、スリー・マイル島事故は熱エネルギーの制御に失敗した冷却材喪失事故(空焚き事故)であり、いずれも、「安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない事故」と定義されるシビアアクシデントである。これらの、かつては起こり得ないとされていたシビアアクシデントにより、「安全神話」は崩壊したといわれた。
 日本においては、1999年(平成11)には東海村臨界事故が発生、大量被曝した作業員2人がその後、相次いで死亡し、その安全性に対する社会的な信頼も大きく揺らぐこととなった。また、2007年(平成19)に起きた新潟県中越沖地震で、新潟県の東京電力・柏崎刈羽原子力発電所が被災、この地震により変圧器の火災や、大気中や海中に周辺環境には影響を与えない程度の微量の放射性物質漏れが発生した。その後原発設計当時の周辺断層の評価が適切に行われていたかどうかが問題となった。
 そして、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震の影響により、東京電力福島第一原子力発電所事故が発生した。6基ある原子炉のうち運転中の1~3号機が炉心溶融に至り、発生した水素ガスによって、停止中だった4号機を含む原子炉建屋(たてや)が次々に爆発するなどして、大量の放射性物質が環境中に放出された。東京電力は、大気中への放出量について、3月12日から31日までで希ガス約5×1017ベクレル、ヨウ素131約5×1017ベクレル、セシウム137約1×1016ベクレル、セシウム134約1×1016ベクレルと推定、海洋への放出量については、3月26日から9月30日までで、ヨウ素131約1.1×1016ベクレル、セシウム137約3.6×1015ベクレル、セシウム134約3.5×1015ベクレルと推定している。放射能災害を避けるために約15万人が避難を余儀なくされた。
 溶融炉心は10年以上にわたって冷却し続けなければならず、冷却水の巨大な循環ループを作って作業が続けられているが、増え続ける汚染水貯留タンクからの漏水事故などが発生している。東京電力の作成した中長期ロードマップでは、原子炉の解体、溶融炉心(炉心デブリ)の取出しなど、1~4号機の廃止措置終了までに30年近くかかるとしている。
 福島第一原子力発電所事故は、それまで日本において安全審査の対象とされてきた「重大事故」、「仮想事故」を超えるシビアアクシデントである。日本ではシビアアクシデントの発生確率はきわめて小さいとして法的な規制対象とされずに、その対策は事業者の自主的取組みに任せられ、地震津波対策もなおざりにされていた。
 相次ぐ事故・故障による安全性への疑問や、使用済み核燃料の処分方法が確立しないままの原発推進政策への批判にもかかわらず、日本の原子力開発は、産官学癒着体制を形成して強引に進められてきた。こうした体質こそが、事業者に甘い規制行政を生み、福島第一原子力発電所事故へとつながったといえる。
 福島事故後の批判の声を受けて、政府は原子力推進官庁である経済産業省の下にあった原子力安全・保安院を解体し、新たに環境省の外局として原子力規制委員会を発足させた。また従来の安全審査指針類を改め、「設計基準」「重大事故」「地震津波」を中心とした規制基準を定めた。原子力規制委員会は、「重大事故対策」の基準を設け、「世界一厳しいシビアアクシデント対策をとった」としているが、シビアアクシデントの発生を大前提とし、巨大なリスクを冒してまで原発を運転することの可否が改めて問われるべきであろう。なお、新規制基準では「シビアアクシデント」を「重大事故」の名称でよんでいるが、これは旧安全審査指針の「重大事故」と混同するおそれがあり、妥当とは言えない。[舘野 淳]

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世界大百科事典内の原子力発電の言及

【環境放射線】より

…すべての人間が程度の差こそあれ環境放射線に被曝(ひばく)しており,その被曝の個人管理は医療被曝や職業被曝に比し困難である。環境放射線はその線源に関して,自然放射線natural radiation,ならびに核実験,原子力発電所等核燃料サイクルおよびその他雑線源からの人工放射線artificial radiationがある。また,被曝様式と関連して,線源が人体外にある体外放射線と,放射性物質を体内に取り込むことによる体内放射線とがある。…

【原子力】より

…これを契機に,国連の下部機構として原子力の国際管理を目的とした国際原子力機関(IAEA)が57年に創立された。55年にはジュネーブで国連の主催による原子力平和利用のための国際会議(いわゆるジュネーブ会議)が開かれ,原子力発電技術の内容,世界的ウラン資源の賦存状況などが公開された。54年にソ連では初の原子力発電所(5000kW)の運転が開始されている。…

【チェルノブイリ原発事故】より

…1986年4月26日,旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチェルノブイリChernobyl’原発で発生した原子力発電開発史上最悪の事故。
[経過]
 保守点検のため前日より原子炉停止作業中であった4号炉(出力100万kW)で,26日午前1時23分(モスクワ時間)急激な出力上昇をもたらす暴走事故が発生し爆発に至った。…

【発電】より

…力学的エネルギー,熱エネルギー,核エネルギー,その他のエネルギーを電気エネルギーに変換すること。大規模な発電は現在のところ水車や蒸気タービンなどの原動機を利用して発電機を回転して行うものが主体であって,水力発電,火力発電,原子力発電などと呼ばれる。水力発電は水の高低差を利用して水車によって発電機を回転させるもの,火力発電は石炭,石油,天然ガス(LNG)などの化石燃料をボイラーで燃やして得られる高温・高圧の蒸気でタービン発電機を回転させるもの(厳密にはこれは汽力発電といい内燃機関などを利用する他の火力発電と区別している),原子力発電は火力発電の化石燃料の代りに核燃料を使用し核分裂反応の熱エネルギーで蒸気を発生してタービン発電機を回転させるものである。…

【放射性廃棄物】より

… 処分とは,将来再び取り出す必要がないように最終的に処置することをいい,これに対し貯蔵とは,必要に応じて定期的に管理しながら保管することをいい,貯蔵期間によって短期貯蔵と長期貯蔵に分類される。
[原子力発電所放射性廃棄物]
 原子力発電所の放射性廃棄物は,操業から発生するものと,閉鎖解体(デコミッショニング)からの物とに大別される。これらの放射性廃棄物は原則として発生した原子力発電所で処理される。…

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