国会議員,地方議会議員,地方公共団体の長などの〈公職の候補者〉になること。比例代表選出議員の選挙以外の選挙においては,選挙人は候補者に対してのみ投票することができ,候補者でない者の名前を記載した投票は無効となるが(公職選挙法68条1項2号),候補者としての身分を取得するためには,被選挙権(10,11,252条)を有するということだけでは足りず,(1)本人の届出,(2)他人による推薦届出(この場合には,選挙人名簿に登録された者が本人の承諾を得て届け出なければならない),(3)政党等による届出(衆議院小選挙区選出議員の選挙に限る)により(86条1~3項,86条の4-1項・2項),また比例代表選出議員の選挙においては,政党等による衆議院名簿・参議院名簿の届出により(86条の2-1項・2項,86条の3-1項・2項),当該選挙の公職の候補者としての身分を取得する。届出は,当該選挙の期日の公示または告示の日に,選挙長に対して,郵便によることなく,文書で行われなければならないが,この文書には,候補者の氏名,本籍,住所,生年月日,職業,所属党派名などの記載が求められている。
日本では,もともといわゆる普通選挙法(衆議院議員選挙法改正。1925公布)が施行されるまでは,立候補制度はとられておらず,選挙人は,被選挙資格者であればだれにでも投票することができたが,1925年の衆議院議員選挙法改正により,まず衆議院議員について立候補制度が採用され,つづいて府県会議員および市会議員選挙に,さらに43年には町村議会議員の選挙にも立候補制度が採用されて今日に至っている。
立候補は,憲法に明文の定めはないが,国民の参政権の当然の帰結として,憲法15条1項で保障されている基本的人権の一つであると解されているが,公職選挙法には,衆議院および参議院の比例代表選出議員の選挙に関して無所属候補者の単独立候補が禁じられていることのほか,種々の制約が定められている。すなわち,重複立候補および重複名簿登載が禁止されていること(87条。ただし,衆議院の小選挙区比例代表併立制のもとでは,政党候補者に限り,小選挙区と比例区への重複立候補が認められ(86条の2-4項),小選挙区で落選しても比例区で当選することができる。〈衆議院〉の項参照),選挙事務関係者および公務員の立候補には一定の制限が置かれており(88,89条),候補者になることのできない公務員が候補者として届け出られた場合には,届出日に公務員を退職したものとみなされ,逆に候補者として届け出た者が,候補者になることのできない選挙事務関係者または公務員になった場合には,立候補を辞退したものとみなされることになっていること(90,91条),立候補の届出または推薦届出には一定額の供託金が必要であること(92条),などである。供託金制度(供託)は,売名立候補や候補者乱立を防ぐ目的で設けられている制度であり,供託金は原則として選挙の終了とともに返還されるが,一定数以上の得票がない場合,および候補者が立候補を辞退した場合には,没収されて,国庫,都道府県,または市に帰属する(93,94条)。これらの制約はただちに違憲の問題を生ずるわけではないが,供託金があまりに高額化されたり,候補者名簿提出の要件が著しく加重されたりした場合には,立候補の権利の侵害として違憲であるとされることもありえよう。また,候補者が一定の選挙犯罪を自ら犯したり,あるいは選挙運動の総括主宰者,出納責任者等が犯した場合には,一定の期間立候補が禁止される(251条の2,252条。〈連座〉の項参照)。
→比例代表制
執筆者:日比野 勤+黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…選挙において当選を目ざして候補者,立候補予定者,支持者らが行うあらゆる運動を選挙運動という。選挙運動は選挙の公示のはるか以前から始まっている。…
※「立候補」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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