細菌感染によっておこる腎盂の炎症をいう。臨床上、腎実質にも感染が及んだ腎盂腎炎との鑑別が困難であり、最近ではむしろ腎盂腎炎とほぼ同義に扱われることが多い。細菌は大腸菌がもっとも多く、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎双球菌などのこともある。膀胱(ぼうこう)炎があって尿管を上行して感染したり、体内のどこかに化膿(かのう)巣があって血行を介しておこることもある。また、近接臓器からリンパ管を介しておこることもある。尿路結石、遊走腎、尿管狭窄(きょうさく)などのほかに局所刺激、尿のうっ滞などがあると感染がおこりやすく、再発を繰り返すことが多い。
寒気、ふるえとともに39℃前後の高熱があり、朝は平熱に近く夕刻になると高熱になるという熱の変動が著明である。左右どちらかの腎臓部に鈍痛あるいは不快感があるか、その部を叩打(こうだ)すると疼痛(とうつう)を認めることが多い。尿が濁り、多数の白血球と細菌が認められる。普通、1週間以内に治癒するが、腎臓の一部に限局して膿がたまる膿腎症になると、さらに長引く。また女性では、とくに罹患(りかん)しやすい時期として乳児期、結婚直後、妊娠時などがある。
急性のものは安静や保温に心がけ、刺激性の食品や飲料を避けるが、水分は十分な尿量を確保するように多めにとる。病原菌に著効を示す化学療法を行う。経過の長引くものや再発するものに対しては、精密検査が必要である。
[加藤暎一]
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…尿路感染症の一つ。かつては腎盂炎ともいわれ,炎症が腎盂に原発して,腎臓の実質に及んだものを指したが,その後,腎臓の実質の炎症が腎盂に及んだものをも含めて,腎臓の感染性炎症を腎盂腎炎と総称するようになった。病原菌としては,大腸菌やクレブシエラKlebsiellaなどの腸内細菌が最も多く,緑膿菌,変形菌がこれに次ぐ。…
※「腎盂炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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