デジタル大辞泉
「腎盂腎炎」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
腎盂腎炎 (じんうじんえん)
pyelonephritis
尿路感染症の一つ。かつては腎盂炎ともいわれ,炎症が腎盂に原発して,腎臓の実質に及んだものを指したが,その後,腎臓の実質の炎症が腎盂に及んだものをも含めて,腎臓の感染性炎症を腎盂腎炎と総称するようになった。病原菌としては,大腸菌やクレブシエラKlebsiellaなどの腸内細菌が最も多く,緑膿菌,変形菌がこれに次ぐ。これらの細菌は,血行を介して(血行感染),あるいはリンパ管を通じて(リンパ行感染)も腎臓に到達するが,最も主要な感染経路は,下部尿路から尿管を通しての逆行性感染である。とりわけ,膀胱などの下部尿路に感染がある場合や,尿路結石や尿管狭窄などによる尿の通過障害があると,発症しやすくなる。発症の頻度は,40歳まででは圧倒的に女子に多いが,それ以上では男女差は小さい。
腎盂腎炎は急性のものと慢性のものに大別される。急性腎盂腎炎は,突然,悪寒戦慄を伴う高熱で発症し,腎臓部の圧痛があり,ときに急性腹症を呈し,重篤な場合では菌血症や敗血症を併発することもある。尿は細菌を伴った細菌尿となり,膿尿となることも多い。治療は安静を保ったうえで,強力な化学療法を行う。大量な抗生物質の使用によって,1~2週間で完治するが,治療が不完全だと,全治したかにみえても,慢性化して,治療が非常に困難になるので注意を要する。
慢性腎盂腎炎は急性腎盂腎炎が慢性化してなる場合が多いが,ときに最初から潜在的に始まって慢性化することもある。急に悪化するときには急性腎盂腎炎の症状を示すが,一般には全身倦怠,微熱,貧血,胃腸症状などの全身症状がみられるだけのことが多い。尿検査では細菌尿や膿尿がみられる。治療は抗生物質などによる化学療法で,6ヵ月から1年の経過観察が必要である。腎臓実質の破壊が進むと,腎不全や萎縮腎を起こすことがある。
執筆者:菊池 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Sponserd by 
腎盂腎炎(尿路感染症)
(1)腎盂腎炎(pyelonephritis)
概念・病態
腎盂腎炎は,細菌感染による腎盂,腎杯および腎実質に及んだ炎症と定義される.急性単純性腎盂腎炎は性的活動期の女性に多い.慢性複雑性腎盂腎炎は高齢者に多い.単純性尿路感染症の起因菌は大腸菌が70~80%を占める.複雑性では大腸菌のみならず,緑膿菌や腸球菌も起因菌となることが多いので注意を要する.
診断
悪寒・戦慄を伴う高熱,腰背部痛を訴えることが多い.また,先行する頻尿,排尿時痛などの膀胱炎様症状を伴うことが多い.特徴的な身体所見として患側部の肋骨脊柱角叩打痛(costvertebral angle tenderness:CVA tenderness)が認められる.尿所見では膿尿,細菌尿がみられる.尿沈査で膿尿は白血球5個/HPF 以上,細菌尿は細菌104 CFU/mL以上のことが多い.尿培養により起炎菌を決定する.敗血症を疑う場合には血液培養も行う.血液検査では白血球増加,赤沈亢進,CRP上昇などの炎症所見が得られる.複雑性では水腎症を有する場合が多いため,腹部超音波検査などの画像検査が必要である.
最近抗菌薬に対する多剤耐性菌が増加しているため,起炎菌の薬剤感受性の検査が必須である.
治療
安静,輸液,抗菌薬投与が重要である.単純性では大腸菌を念頭においた抗菌薬の選択を行う.高齢者,基礎疾患がある複雑性腎盂腎炎では,緑膿菌や腸球菌なども原因菌となるので,感受性の広い薬剤選択を行う.輸液,水分摂取により2 L/日以上の尿量を保つようにする.易感染性がある場合には膿腎症へ進展することがあり,発症早期より速やかに抗菌薬投与を開始することが必要である.再発することが多いため,抗菌薬は2週間程度確実に投与されることが必要である.[久末伸一・堀江重郎]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
Sponserd by 
腎盂腎炎
じんうじんえん
細菌感染による腎盂および腎実質の炎症をいう。感染が腎盂に限局される。腎盂炎の多くは、やがて腎実質も侵され腎機能が障害されるので、腎盂炎と腎盂腎炎は現在ではほぼ同義に扱われることが多い。また、上部尿路感染症も腎盂腎炎に関連した疾患である。
[加藤暎一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
Sponserd by 
腎盂腎炎
じんうじんえん
pyelonephritis
細菌感染によって腎盂腎杯系と腎実質に炎症を起す疾患。起炎菌はグラム陰性桿菌が多い。妊娠,糖尿病,尿路結石,痛風,神経因性尿閉,留置カテーテルなどで誘発されやすい。急性症では,悪寒戦慄,発熱,全身倦怠感,頭痛,尿意頻数,排尿痛,腎臓部の疼痛などの症状が出る。慢性症ではこのように激しい症状はない。尿は通常膿尿で,細菌が証明される。治療には抗生物質を投与する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
Sponserd by 
じんうじんえんじんうえん【腎盂腎炎(腎盂炎) Pyelonephritis】
細菌の感染によっておこる、腎盂や腎杯(じんぱい)など、尿がしみ出してくる腎臓内の空間(腔(くう))や、腎臓の組織そのもの(腎実質(じんじっしつ))の炎症をいいます。
腎盂炎と呼ぶこともありますが、実際には腎臓の組織自体の炎症もともなうわけで、「腎盂腎炎」と呼ぶほうが正しいといえます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
Sponserd by 