家庭医学館 「腎炎症候群と糸球体腎炎」の解説
じんえんしょうこうぐんとしきゅうたいじんえん【腎炎症候群と糸球体腎炎】
最近まで、糸球体腎炎は急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎の3つに分類されていました。
急性糸球体腎炎は、急性に血尿(けつにょう)、たんぱく尿、乏尿(ぼうにょう)、高血圧、むくみなどを示す糸球体腎炎です。
急速進行性糸球体腎炎は、急激に発病して短期間で末期の腎不全になってしまう治療のむずかしい糸球体腎炎です。
慢性糸球体腎炎は、たんぱく尿および(あるいは)顕微鏡でみられる程度の血尿が長期(1年以上)にわたって続き長引いて、多くの場合、腎臓の機能は正常に保たれ、なかなか病気が進行しない(潜在型)糸球体腎炎です。
しかし、徐々に腎機能障害が進行するものもあります(進行型)。
これらの病名は、糸球体腎炎をおこす原因として、なにか基礎になっている病気がないことを前提にしています(それで、一次性の糸球体病変という)。ところが、種々の全身性の病気、代謝性(たいしゃせい)の病気、遺伝性の病気が、これらの糸球体腎炎と同じような症状や経過を現わす腎臓の病変をおこすことがわかってきました。
そこで最近では、一次性糸球体病変だけではなく、基礎になっている病気がある場合も含めて、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、慢性腎炎症候群、と呼ぶようになりました。
ただし、慢性糸球体腎炎のかなりの部分が腎機能障害の進行しない潜在型ですが、慢性腎炎症候群というものは、経過とともに徐々に腎機能が低下すると定義されています。
その意味で、慢性腎炎症候群は、これまでの慢性糸球体腎炎の進行型にあたることになります。
これまでの慢性糸球体腎炎のほとんどを占めた潜在型の慢性糸球体腎炎は、最近は無症候性たんぱく尿・血尿症候群と呼ばれています。