デジタル大辞泉
「急性腎炎症候群」の意味・読み・例文・類語
きゅうせいじんえん‐しょうこうぐん〔キフセイジンエンシヤウコウグン〕【急性腎炎症候群】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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家庭医学館
「急性腎炎症候群」の解説
きゅうせいじんえんしょうこうぐん【急性腎炎症候群 Acute Nephritic Syndrome】
◎自然に治ることが多い
[どんな病気か]
急性腎炎症候群は、腎臓の糸球体(しきゅうたい)が障害されることによって、たんぱく尿、血尿(けつにょう)、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、高血圧などの症状が急激に発症する症候群です。ふつうは、かぜなど上気道(じょうきどう)の感染が先におこって、自然によくなる場合が多いものです。
[原因]
いろいろな糸球体腎炎や全身性の病気が原因になります(コラム「急性腎炎症候群の原因となる病気」)。
以前は、急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)といわれていた病気ですが、急性糸球体腎炎という病名は、溶連菌感染後(ようれんきんかんせんご)急性糸球体腎炎、あるいは非溶連菌感染後(ひようれんきんかんせんご)急性糸球体腎炎だけに使っていました。
これらの病気が、急性腎炎症候群の代表的な病気であることはまちがいありませんが、現在では、もっと広い意味で、急性糸球体腎炎と同様の経過をとる病気を急性腎炎症候群と呼んでいます。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎がどのようにしておこるかを説明します。
溶連菌という細菌が、上気道(のどまでの気道)や皮膚に感染して症状をひきおこすと、同時に血液中に溶連菌に対する抗体(こうたい)ができてきます。抗体は、菌を攻撃するために菌と結合します。この結合したもの(免疫複合体(めんえきふくごうたい))が、動脈を通って腎臓に入り、糸球体で濾過(ろか)されるとともに沈着して糸球体を障害し、急性糸球体腎炎をひきおこすと考えられています。
[症状]
浮腫、高血圧、血尿が、急性腎炎の三大症状です。
血尿は、糸球体からもれ出る赤血球の数が多ければ、肉眼で確認できます。数が少なければ、顕微鏡で見ないとわかりません(顕微鏡的血尿)。いずれにしても血尿は、急性糸球体腎炎にほぼかならず現われる症状です。
腎臓のはたらきが悪くなると、尿量が減り、たんぱく質の老廃物が蓄積します。ひどい場合には、肺に水がたまって呼吸困難になったり、尿毒症(にょうどくしょう)(「尿毒症」)の症状がみられることもあります。
検査では、まず尿の検査で、たんぱく尿や血尿がみられます。血液検査では、たんぱく質の老廃物であるクレアチニン、尿素窒素(にょうそちっそ)などが増えているのがわかります。
溶連菌の感染が原因の場合は、溶連菌に結合しようとする抗体、抗ストレプトリジンO(ASO)あるいは抗ストレプトキナーゼ(ASK)が血液中で増加しているのが検査でわかります。急性腎炎症候群は、おもに免疫反応(めんえきはんのう)でおこる病気ですから、免疫反応で消費される血液中の補体(ほたい)(免疫にかかわるたんぱく質)が減っていることも検査でわかります。
◎安静と食事療法がたいせつ
[治療]
急性腎炎症候群の治療は、安静と食事療法がたいせつです。とくに初期は、入院による絶対安静が望ましいと考えられます。
食事療法としては、腎臓の弱り方の程度にもよりますが、まず、たんぱく質の老廃物がたまるのを抑えるため、食事のたんぱく質の量を制限します。また、急性腎炎症候群では、むくみで体液量が増加していますので、ナトリウムの摂取も制限します(「腎臓のしくみとはたらき」)。
ただし、エネルギーが不足すると代謝(たいしゃ)がうまくいかず、たんぱく質が有毒なものになるので、カロリーの制限はしません。
薬物療法としては、もし細菌による扁桃炎(へんとうえん)があれば、抗生物質を使います。高血圧とむくみに対しては、それぞれ降圧薬と利尿薬(りにょうやく)を用います。
[予防]
扁桃炎をくり返し、そのたびに血尿やたんぱく尿がみられる場合は、予防のため扁桃の摘出を考えます。
[予後]
とくに溶連菌感染後急性糸球体腎炎は治りやすい病気で、70%くらいの患者さんが完全に治りますが、残りは慢性化します。子どもが治る率はもっと高くて、90%ほどにもなります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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