日本大百科全書(ニッポニカ) 「膀胱腟瘻」の意味・わかりやすい解説
膀胱腟瘻
ぼうこうちつろう
膀胱と腟間の組織が部分的に欠損して穿通(せんつう)してしまった状態をいう。膀胱の下壁は腟壁と隣接しているので、子宮摘出時に膀胱壁を損傷して瘻孔ができてしまう場合がもっとも多い。膀胱内の尿が瘻孔を通して腟腔(くう)へ常時、流出してくるので、いわゆる尿失禁の状態となる。このほか、子宮癌(がん)の膀胱壁への浸潤や出産時の腟壁損傷からもおこりうる。膀胱鏡によって瘻孔を確認するが、腟腔へ特殊なカテーテルを挿入して造影剤を注入し、尿管腟瘻との鑑別を行うことも重要である。治療は、原因が癌の浸潤によるものでなければ、瘻孔が大きな場合は手術的に閉鎖する。小さな場合には瘻孔を電気凝固するなり、膀胱内へカテーテルを留置するなりして、自然閉鎖を待つ。
[松下一男]