尿失禁(読み)ニョウシッキン

精選版 日本国語大辞典 「尿失禁」の意味・読み・例文・類語

にょう‐しっきんネウ‥【尿失禁】

  1. 〘 名詞 〙 無意識のうちに尿を排出すること。失禁

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尿失禁」の意味・わかりやすい解説

尿失禁
にょうしっきん

尿が不随意に排出する状態をいい、次のような種類がある。

(1)真性尿失禁 排尿と無関係に絶えず尿が流出してしまうものをいい、尿管が外陰部に開口する先天性の形態異常や尿路と腹壁あるいは腟(ちつ)との間に瘻孔(ろうこう)ができている場合にみられる。神経因性膀胱(ぼうこう)のうちの反射性膀胱の場合は、膀胱に尿があまりためられないために真性尿失禁をおこす。

(2)腹圧性尿失禁 咳(せき)、くしゃみ、重いものを持ち上げたときに少量の尿が不随意的に漏れる状態をいう。若い時期におこることもあるが、一般には分娩(ぶんべん)、婦人科手術および月経閉止後、泌尿器周辺の手術後など、後天的に尿道の緊張が減少した場合に多い。スポーツの運動中にもおこる。原因不明のものもある。

(3)切迫性尿失禁 尿意を感ずるとがまんできず、便所に行く前に漏らしてしまうものをいう。脳卒中、神経因性膀胱などで大脳の膀胱に対する抑制作用が減退したとき多くみられる。また、膀胱炎などで、尿が非常に近くなるとがまんできずに漏らしてしまうことがある。

(4)溢流(いつりゅう)性尿失禁 膀胱に過剰の尿がたまって尿道からあふれ出てくる状態をいい、前立腺(せん)肥大症など慢性尿道通過障害のあるときにおこる。

(5)機能性尿失禁 排尿機能に異常がなくても、運動障害(足などが不自由になる)や大脳の機能障害により、トイレに行くまでに尿を漏らしてしまうものをいう。高齢者に多くみられる。

(6)反射性尿失禁 膀胱内に尿がたまると膀胱収縮反射が不随意に引き起こされ、尿が漏れるものをいう。

(7)遺尿症 膀胱に尿はたまるが無意識のうちに排尿がおこるもので、一般には無意識排尿が夜間におこる夜尿症を意味する。これは、4歳以上の年齢で、昼間の排尿調節は完全であるのに就寝中排尿を自覚できず漏らすものをいう。排尿に関する大脳調節機構がまだ成熟していないのが原因と考えられている。また、精神心理的ストレスなどが原因となっておこる場合もある。思春期になり身体的に成熟してくると、大部分は自然治癒する。なお、ごくまれではあるが、先天的な膀胱・尿道の形態異常を合併しているものがある。

 日本では、60歳以上の高齢者の5割以上に尿失禁があるとされる。尿失禁は、それ自体は生命にかかわる重篤な疾患ではないが、クオリティ・オブ・ライフquality of life=QOL(生活の質)には大きな影響がある。また、高齢化が進行する社会において、尿失禁にかかる費用も増大している。こうした状況のなか、尿失禁の受診・診断から軽快あるいは治癒させて日常生活を快適に過ごすためのシステムが必要とされ、2004年(平成16)厚生労働省が尿失禁ガイドラインを策定した。科学的な根拠に基づく尿失禁の基礎知識、適正な診断、治療、生活指導、介護方法などが示されている。

[土田正義]

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百科事典マイペディア 「尿失禁」の意味・わかりやすい解説

尿失禁【にょうしっきん】

失禁

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世界大百科事典(旧版)内の尿失禁の言及

【失禁】より

…不随意に尿や便をもらす状態をいう。尿をもらすものを尿失禁,便をもらすものを大便失禁という。尿失禁には以下のものがある。…

※「尿失禁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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