花喰鳥(読み)ハナクイドリ

デジタル大辞泉 「花喰鳥」の意味・読み・例文・類語

はなくい‐どり〔はなくひ‐〕【花×喰鳥】

装飾文様の一。鳳凰ほうおうなどの瑞鳥ずいちょう花枝などをくわえたもの。ササン朝ペルシア起源があり、日本では正倉院御物や種々の工芸品にみられ、松喰鶴などの和様化した文様をも生んだ。

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精選版 日本国語大辞典 「花喰鳥」の意味・読み・例文・類語

はなくい‐どりはなくひ‥【花喰鳥】

  1. 〘 名詞 〙 装飾文様の一つ瑞鳥が花の枝をくわえたもの。ササン朝ペルシアに起源があり、正倉院御物の工芸品などに見られ、松喰鶴などの文様に発展した。

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改訂新版 世界大百科事典 「花喰鳥」の意味・わかりやすい解説

花喰鳥 (はなくいどり)

葡萄草花小枝や花唐草をくわえた鳥を形どった吉祥文様。起源はペルシアにあり,ササン朝の染織の図様にあらわされている。これは葡萄の小枝をくわえ,栄光の象徴である真珠の首飾をつけた鳥の文様で,この形式が東伝し,やがてその首飾をついばんだり,さらには首飾のかわりに宝玉を華やかにつないだ綬帯(じゆたい)や美しい小枝をくわえるようになる。唐朝の史書《唐会要》に出てくる〈鶻銜瑞草(かつがんずいそう)〉や〈雁銜(がんかん)綬帯〉の文様はこうした花唐草や綬帯をついばむ鳥獣をあらわしたものである。その具体的な例は正倉院の金銀平脱花鳥背八角鏡,漆金薄絵盤,紅牙撥鏤尺に描かれた花の枝をついばむ鳳凰や鶴,また螺鈿紫檀阮咸の宝玉の綬帯をくわえて飛ぶ鸚鵡(おうむ)などにみることができる。さらに花喰鳥は平安朝以降,厳島神社の松喰鶴蒔絵小唐櫃にみられるように吉祥文である松と結びつき,日本独特の松喰鶴へと発展していく。
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