野菜や草花の苗を売り歩く人。江戸で近在の農家の者が晩春から初夏にかけて、胡瓜(きゅうり)、茄子(なす)、芋、玉蜀黍(とうもろこし)や朝顔、桜草の土付きの苗を畚(もっこ)に五つくらい重ねて、または鉢などに植え、天秤(てんびん)棒で担い町中を売り歩いた。上方(かみがた)では夜市で売られた。この苗売りは19世紀に始まったものとみられる。庶民の実用と観賞という生活の要請から生まれたものであろう。19世紀の末に東京で見受けられた苗売りは、手拭(てぬぐい)かぶり、しりはしょりに角帯を締め、盲縞(めくらじま)の上着に紺パッチという姿であったという。近世とは服装は多少変わったであろうが、売り声は同じである。この職業は20世紀に入ると少なくなり、第二次世界大戦後はほとんどみられない。
[遠藤元男]
『仲田定之助著『明治商賣往来』(1968・青蛙房)』
「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...