日本大百科全書(ニッポニカ) 「荊釵記」の意味・わかりやすい解説
荊釵記
けいさき
中国、明(みん)初の長編戯曲。48齣(せき)(場)。作者不詳。王国維は明の寧献王(ねいけんおう)の作というが確かではない。宋(そう)の王十朋(おうじっぽう)と銭玉蓮(せんぎょくれん)は婚約し、家の貧しい十朋の母は荊釵(かんざし)を玉蓮に与える。十朋は科挙に首席で及第、丞相(じょうしょう)に見込まれ婿になれと強要されるがそれを断ったため、遠地に赴任させられる。玉蓮に横恋慕する孫汝権(そんじょけん)は、十朋の手紙に手を加え、丞相の婿になったと銭家に伝え、玉蓮との結婚を迫る。玉蓮の継母は金持ちの孫が気に入り孫に加担したため、玉蓮は川に身投げするが救われて5年後に十朋と再会、荊釵が証拠となり結ばれる。筋の運びに優れ、台詞(せりふ)、歌詞が飾らず自然なことから近年まで盛んに上演されてきた。『六十種曲』に収録されているが、明代の人の手が加えられている。
[平松圭子]