(読み)やく

日本大百科全書(ニッポニカ)「葯」の解説


やく

被子植物の雄しべの主要部で、多くは花糸の上端に位置する。普通、葯は二つに分かれ(これを半葯という)、その間に葯隔がある。一つの半葯には二つの葯室があるため、葯室は合計四つとなる。葯室の中には多数の花粉母細胞が生じるが、それぞれ減数分を経て4個の花粉となる。葯室はシダ植物の小胞子嚢(のう)に相当する。葯は花糸に対して、多くは側生するが、内向または外向するものもある。また、ユリ属などのように葯の中央部に花糸がつき、雄しべ全体としてはT字形になるものもある。花粉が成熟すると、葯は裂開して花粉を出す。普通、縦に裂開するが、ツツジ属のように先端部に孔(あな)の開く孔開、クスノキ属のように壁が弁状にめくれる弁開などの裂開法もある。

[田村道夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「葯」の解説


やく
anther

おしべ先端の,花粉を入れる袋状構造。葯は,おしべの糸状構造である花糸の先端についていて,葯隔という仕切りによって2分されており,この隔室を半葯 thecaという。花粉は葯内で生じたのち,外部に通じる開口から外部に放出されるが,これには葯が裂開する場合のほか,小孔を有している場合 (ツツジなど) ,弁をもつ場合 (メギなど) などもある。発生学的由来としては,葯は,小胞子葉の上に生じる小胞子嚢の変形とみなされる。

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百科事典マイペディア「葯」の解説

葯【やく】

おしべの一部で,ふつう花糸の先端に生じ,花粉形成が行われる袋状の部分。中に花粉を生じる花粉嚢2個からなる葯胞が2個集まって1個の葯ができる。花粉がでる時には多く葯が縦裂するが,ナスではその頂端が開いて飛び出す。
→関連項目エキザカム花粉

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精選版 日本国語大辞典「葯」の解説

やく【葯】

〘名〙 雄しべを構成する器官。花粉を入れている器官で、ふつう花糸の先端にあって、中で花粉が作られ、成熟すると裂け花粉を出す。〔植学啓原(1833)〕

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世界大百科事典内のの言及

【おしべ(雄蕊)】より

…〈ゆうずい〉ともいう。種子植物の花を構成する要素のうちの雄性器官で,花粉を入れる葯anther(小胞子囊)とそれを支える花糸filament(小胞子葉)からなる。異型胞子性シダ植物群の小胞子葉と形態的に相同である。…

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