蒟醬(読み)きんま

改訂新版 世界大百科事典 「蒟醬」の意味・わかりやすい解説

蒟醬 (きんま)

黒漆地に朱漆または色漆で,塡漆技法により文様を表した漆器。中国の沈金の影響をうけてタイでつくられたが,16世紀以降はビルマ(現,ミャンマー)が主産地である。素地は竹で,編胎,捲胎とし,高級品は馬毛を用いた。加飾は黒漆地に両刃の刀で,下図なしに直接文様を彫りつけ,油の入った色漆を一面に塗り,乾燥を待って刻線以外の色漆を研ぎ落とす。最後に油混和の漆を薄く塗って光沢を出す。古くタイではビンロウ檳榔)の実に石灰をまぶし,蔓草の一種であるキンマ(蒟醬(くしよう))の葉に包んでいっしょに嚙む習慣があり,これらの材料を地産の漆器に入れて客をもてなした。タイではキンマークと呼び,タイ語でキンは嚙む,マークはビンロウの意で,これがキンマとなまってタイの漆器を称するようになったといわれる。日本には八幡船,朱印船でもたらされ,江戸時代には茶人の間で珍重され,伝利休所持の茶箱などが伝わる。きんまの技法は天保(1830-44)ころ,玉楮象谷(たまかじぞうこく)によって開発され,高松漆器の基を築いて今日に及んでいる。
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