日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンマ」の意味・わかりやすい解説
キンマ
きんま
betel
[学] Piper betle L.
コショウ科(APG分類:コショウ科)の常緑藤本(とうほん)(つる植物)。マレーシア原産といわれ、インド、東南アジアで広く栽培され、木や垣根によじ登らせる。葉はやや厚く、卵形で先端はとがり基部は心臓形、左右不等で長さ7~20センチメートル、葉柄は長さ1~2.5センチメートル。雌雄異株で雌株のほうが多いという。雄株の穂状花序は7~15センチメートル、雌株のはそれより長い。葉をインドではパンpanとよび、辛味と芳香があるので、古くから口臭を除き、声をよくするために新鮮な葉をかむ風習がある。普通は葉柄と葉の先を除き、葉身の中央に水で練った石灰を塗り、ビンロウジの未熟な種子の小片を置き、さらに味をよくし、薬効を高めるために砂糖、ココナッツ、チョウジ、カルダモン、ウイキョウ、カンゾウ、ニクズク、タバコなどを好みにあわせて加え、葉で包んで口中に入れ時間をかけてかむ。胃腸や歯をじょうぶにし、駆虫の効果もある。ビンロウジの赤い色素とタンニンがアルカリ液に接するために口中と唾液(だえき)は紅色になる。この風習はインド、マレーシア、ベトナム、中国南部、インドネシア、さらにアラビア、アフリカでも行われていて、人類の3分の1の嗜好(しこう)品となっている。
[長沢元夫 2018年7月20日]