日本大百科全書(ニッポニカ) 「薬物性肺炎」の意味・わかりやすい解説
薬物性肺炎
やくぶつせいはいえん
1950年代の高血圧症に対する自律神経節遮断剤をはじめ、抗腫瘍(しゅよう)剤のブスルファンによる肺炎が報告されて以来、各種の抗腫瘍剤や化学療法剤の開発とともに薬物起因の肺炎の発生頻度が増加している。発症機序はアレルギー反応と、薬剤そのものの細胞毒作用とが考えられている。間質性肺炎をおこしやすい薬物としては、抗腫瘍剤のブレオマイシン、ペプロマイシン、メトトレキサート、ブスルファン、シクロホスファミド、マイトマイシンなど、降圧剤のヘキサメトニウム、ペントリニウム、メチルドパ、サイアザイドなどがある。また、ペニシリン、パス、スルフォンアミドなどはレフレル症候群をおこし、点鼻薬や下剤などの中に含まれている油を吸引すると、リポイド肺炎がおこる。主要症状は発熱、咳(せき)、呼吸困難で、胸部X線検査で両肺野にびまん性の浸潤を認める。起因薬剤が推定されれば、ただちに投与を中止する。重症ではステロイド剤を投与する。
[山口智道]