藁(稲の藁)や稈(かん)(麦の藁)を編んだり織ったりして加工すること。おもに農閑期の作業として発達した。精選された藁は、すべ(下葉)を取り、先端のみご(藁芯(しん))を抜いて「藁ごしらえ」が完了した後、さらに「藁打ち」をして柔らかくしたものを細工に用いる。ただし、薦(こも)、莚(むしろ)、俵など特殊なものに限り、「藁打ち」は行われない。
藁葺き屋根から藁草履(ぞうり)に至るまで、藁細工は農家の生活に欠くことのできない技術であるが、技法的には「組む」(縄類)、「編む」(履き物類、笠(かさ)、蓑(みの)、俵など)、および「織る」(薦莚類)に大別することができる。さらに細別すると「道具編み」と「手編み」に分かれ、俵脛巾(はばき)などは前者、笠や蓑類は後者によるものである。一般に縄を綯(な)うのが農家の仕事始めで、履き物をつくったりするのは冬季の農閑作業である。生活に密着した藁細工は、郷土色豊かな民芸品の数々を生み、東北地方で幼児を入れる「えじこ」や、飯櫃(めしびつ)を入れる藁櫃などはとくに有名である。
また、生活実用品だけでなく、人形や馬などの郷土玩具(がんぐ)もつくられている。それらは元来、土偶と同じく信仰や呪詛(じゅそ)のために用いられ、縁起物として人々に求められたものであったが、現在ではもっぱら、観賞用、愛玩用となっている。東京・深大寺の赤駒(あかごま)、長野県桐原の藁馬、岡山県有漢(うかん)のことこと馬、広島県庄原(しょうばら)のとらへい馬、福岡県芦屋(あしや)の八朔(はっさく)藁馬、岩手県花巻の俵牛などが有名である。
[秋山光男]
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