六訂版 家庭医学大全科 「虚血性視神経症」の解説
虚血性視神経症
きょけつせいししんけいしょう
Ischemic optic neuropathy
(眼の病気)
どんな病気か
視神経での急激な循環障害により発症する、視神経の
原因から、動脈炎型と非動脈炎型の2つに分かれます。とくに、動脈炎型は視力障害が重く、短時間のうちに反対の眼にも発症することが知られており、早期の診断・治療が必要な病気です。
また、梗塞の部位により、眼球と視神経の接続部分である
原因は何か
視神経は、
動脈炎型は、炎症により血管が
非動脈炎型は、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの基礎疾患を背景にすることが多く、
症状の現れ方
中高齢者に、突然、急激な視力障害が起こります。視力障害の程度はさまざまですが、一般に動脈炎型のほうが重く、発症と同時に視力を失うこともあります。視力はよくても視野の上半分(または下半分)が見えなくなる
眼球や眼の奥に痛みを伴うことはありませんが、動脈炎型の場合は、血管炎に伴って側頭動脈周囲(こめかみ)の痛み、
動脈炎型や、非動脈炎型で内頸動脈の狭窄を伴う場合は、発症前に「急に片眼が見えなくなって、数秒~数分で元の見え方にもどる」という症状(
検査と診断
前部虚血性視神経症の場合は、眼底検査で視神経乳頭に特徴的な
後部虚血性視神経症の場合は、発症当初にはまったく眼底に異常がなく、
動脈炎型の場合は、赤血球沈降速度(赤沈)の著しい
非動脈炎型の場合は、眼底検査で視神経乳頭が小さいことが特徴のひとつとされます。基礎疾患としての糖尿病、高血圧、動脈硬化、また内頸動脈狭窄の存在について検査することが望まれます。
治療の方法
動脈炎型は、短時間のうちに反対の眼にも発症して、両眼失明に至る危険が高いため、他眼の発症予防と全身状態の改善を目的として、緊急に副腎皮質ステロイド薬による点滴治療を開始します。その後も赤沈の正常化を目安に、副腎皮質ステロイド薬の内服を継続する必要がありますが、発症眼の予後は残念ながら不良です。
非動脈炎型の場合、米国での調査では発症6カ月後に42.7%が3段階以上の視力改善、12.4%が3段階以上の視力悪化、44.9%が不変という自然経過を示しました。一方で、3年後には25%が、10年後には50%以上が両眼性に移行するという報告もあります。
一般には、ビタミンB12製剤の内服による神経保護治療を行います。また急性期には、浮腫の軽減を目的に副腎皮質ステロイド薬による治療を行うことがあります。さらに、糖尿病など基礎疾患がある場合や、眼底検査で他眼の視神経乳頭が小さいことが判明し、他眼にも発症のリスクが高いと考えられる場合は、他眼の発症を予防する目的でアスピリンの内服をすることもあります。
病気に気づいたらどうする
とくに、高齢者に発症する側頭部痛などを伴う動脈炎型は、両眼失明に至る危険があり、緊急な治療が必要な病気です。すみやかに眼科専門医の診察を受けるようすすめます。
また、無痛性の非動脈炎型の場合でも、その背景に糖尿病、高血圧、動脈硬化や内頸動脈狭窄などの基礎疾患が隠れているおそれがあります。眼科専門医およびそれぞれの背景疾患の専門医の診察を受けるようすすめます。
田口 朗
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報