血管造影法(読み)けっかんぞうえいほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「血管造影法」の意味・わかりやすい解説

血管造影法
けっかんぞうえいほう

血管内に造影剤を注入し、連続的にX線像を得る検査法。従来は血管病変や腫瘍(しゅよう)性病変の存在部位、性状、進展度を診断する目的に施行されていたが、抗がん剤の注入、血管の塞栓(そくせん)、血管の拡張などの治療(interventional radiology:IVR)を主たる目的に行われる頻度が増している。手技的には経皮的に血管を穿刺(せんし)し、X線テレビジョンによる透視下に金属性のガイドワイヤーを血管内に先行させ、それに沿って中空の細い管(カテーテルcatheter)を目的の血管に選択的に挿入する(セルジンガー法Seldinger)。動脈造影における穿刺部位としては鼠径(そけい)部の大腿(だいたい)動脈がもっとも一般的で、ときに腋窩(えきか)動脈や肘(ちゅう)動脈より行う。造影剤としては非イオン性水溶性ヨード製剤が用いられ、注入量と速度を設定できる自動注入装置からカテーテルを介して注入される。造影剤注入後10~30秒間連続的にX線撮影が行われる。従来は造影剤注入後の画像から前の画像を引き算することにより、骨などを消去して血管の造影像のみを得るdigital subtraction angiography(DSA)が一般的に用いられていたが、最近ではフラットパネルディテクタflat panel detector(FPD)を搭載した装置が主流になりつつある。血管造影の技術を応用したIVRとしてもっとも一般的なのが肝細胞がんに対する経カテーテル的肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)で、X線透視下に抗がん剤・造影剤・各種塞栓物質の混合物を腫瘍に向かう肝動脈の血流が途絶するまで注入する。このほか、全身の悪性腫瘍に対する動注療法、脳動脈瘤(りゅう)・血管の異常に対する金属コイルなどを用いた塞栓術および風船付きのカテーテル(baloon catheter)による血管拡張術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)も普及している。今後、磁気共鳴映像法を用いた血管像の描出法(MR angiography:MRA)の進歩に伴い、診断のみを目的とした血管造影はますます減少する傾向にある。

大友 邦 2021年8月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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