デジタル大辞泉
「衣手の」の意味・読み・例文・類語
ころもで‐の【衣手の】
[枕]袖に関する「手」「真袖」「ひるがえる」などの意から、「た」「ま」「わく」「かへる」「なぎ」などにかかる。
「―田上山の真木さく檜の嬬手を」〈万・五〇〉
「―真若の浦の砂地」〈万・三一六八〉
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ころもで‐の【衣手の】
枕
① 「別る」にかかる。たもとを分かって離れる意からか。
一説に、袖が左右に分かれているところからとも。
※
万葉(8C後)四・五〇八「
衣手乃
(ころもでノ)別る今宵ゆ妹も吾れもいたく恋ひむな逢ふよしを無み」
② 袖が風にひるがえる意から、「返(かえ)る」と同音の「帰る」にかかる。
※万葉(8C後)一三・三二七六「
早川の 行きも知らず 衣袂笶
(ころもでの) 帰りも知らず 馬じもの 立ちて爪づき せむすべの たづきを知らに」
③ 「手
(た)」の縁で、「手
(た)」と同音を語頭に持つ地名「
田上(たなかみ)山」および「
高屋(たかや)」にかかる。「田上山」にかかる例は、「手上
(たがみ)」の縁によるとする説もある。
※万葉(8C後)一・五〇「いはばしる 近江の国の 衣手能
(ころもでノ) 田上山の 真木さく 檜
(ひ)の
つまでを」
④ 地名「
名木(なき)の川」「真若
(まわか)の浦」にかかる。かかり方未詳。
※万葉(8C後)一二・三一六八「衣袖之
(ころもでの)真若の浦の
砂地(まなごつち)間なく時なし吾が恋ふらくは」
⑤ 地名「
飛騨(ひだ)」にかかる。
上代の「
常陸(ひたち)」にかかる
枕詞「ころもで」を転用したもの。
※
志濃夫廼舎歌集(1868)松籟草「衣手の飛騨は
百重(ももへ)の山のあなた君も又こじ我も行きえじ」
[
補注]①は、枕詞としない説もある。④の「真若の浦」にかかる例は、「別る」から「若
(わか)」にかかるとする説もある。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報