デジタル大辞泉 「早川」の意味・読み・例文・類語
はや‐かわ【早川】[地名]
山梨県西部、早川町を流れる川。白根山系の
河川名の早川は、弘安元年(一二七八)九月六日の日蓮書状(日蓮聖人遺文)に身延山からみた情景として「北に大河あり、早河と名く、早き事箭をいるか如し」とみえ、その後の書状にも散見する。
芦ノ湖の北岸に源を発し、箱根外輪山の
仁治三年(一二四二)の「東関紀行」は「谷川みなぎりまさり、岩瀬の波たかくむせぶ」と記す。阿仏尼も「十六夜日記」建治三年(一二七七)一〇月二八日に「はやかはといふ河あり、まことにはやし、木のおほく流るゝを、いかにととへば、あまのもしほ木を、うらへいださんとて、ながすなりといふ」と記して「あづまぢのゆさかをこえて見わたせばしほ木ながるゝはや河の水」と詠んでおり、河口の海辺では、潮水を含ませた海藻を焼いて釜で煮る製塩が行われていたらしい。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
山梨県西部を流れる富士川の支流。赤石山脈(あかいしさんみゃく)に源を発し、同山脈とその前山の巨摩(こま)山地の間を糸魚川‐静岡構造線に沿って流下、早川町高住(こうじゅう)の角瀬(すみせ)付近で東流し、身延(みのぶ)町波高島(はだかじま)の対岸飯富(いいとみ)付近で富士川に合流する。河床勾配(こうばい)が急であること、集水面積が広いこと、また比較的降水量の多い地域であること、さらに地質条件も悪いことから台風時にはしばしば大災害を起こし、奥地の集落を孤立させた。森林資源が豊富であり、その開発のため県が林道開発を行い、また水量を利用した多目的ダムが建設された。さらに古くから知られた西山温泉や奈良田(ならだ)温泉もあり、流域はその渓谷美、山岳美がようやく世間に知られるようになった。
[吉村 稔]
山梨県南西部、南巨摩郡(みなみこまぐん)にある町。富士川の支流早川の流域を占め、面積は町・村では県で最大(369.96平方キロメートル)だが、その90%が山林である。1956年(昭和31)本建(もとだて)、五箇(ごか)、硯島(すずりじま)、都川(みやこがわ)、三里(みさと)、西山の6村が合併して町制改称。古くは金山があって栄えた地区もあり、昭和30年代までは農林業も盛んであった。その後、早川を利用した水力発電所を建設、山岳・渓谷美と奈良田温泉(ならだおんせん)、西山温泉、白根(しらね)三山、身延(みのぶ)山奥の院のある七面山(しちめんざん)などがあり、観光地化が進んでいる。雨畑硯(あめはたすずり)が特産品である。人口1098(2020)。
[横田忠夫]
『『早川町誌』(1980・早川町)』
神奈川県西部、足柄下(あしがらしも)郡箱根町から小田原市にかけて流れる川。延長29.4キロメートル。芦ノ湖(あしのこ)北端の湖尻(こじり)に発し、仙石原(せんごくはら)(火口原)をはじめ中央火口丘と古期外輪山の間を流下する火口瀬(らい)で、湯本で須雲川(すくもがわ)をあわせ、小田原市で相模(さがみ)湾に注ぐ。その流水がきわめて早く雷のような音をたてるというので早川と名づけられたという。本流沿いの谷壁は箱根火山の基盤岩層に近く、至る所に緑や紅葉のうっそうたる樹林、それに清流を配して富士箱根伊豆国立公園の核心的景勝美をなす。加えて古くから湯本、塔ノ沢、堂ヶ島、宮ノ下などの温泉の湧出(ゆうしゅつ)も多い。早川の水は江戸時代から小田原の城下町用水、また沿岸農村の灌漑(かんがい)用水に利用されてきたが、現在は県営発電所の用水にも使われている。
[浅香幸雄]
山梨県西部を流れる富士川の支流。長さ約70km。上流は野呂川と呼ばれ,白根三山の間(あい)ノ岳北斜面を水源として北流する。北岳の北を大きくまわって南流し,鷲ノ住山付近で西から荒川を合わせ早川となる。中流はほぼ糸魚川-静岡構造線に沿って南下し,早川町大島で南からの雨畑川を合わせて東流し,身延町の南部で富士川に合流する。早川の流路の多くは糸魚川-静岡構造線やこれに平行する断層に沿っており,地殻変動の影響を強く受けている。また急流で水量も多く,浸食作用が活発で,流域には七面山の大崩壊地をはじめ新旧の崩壊地が各所に見られる。したがって下流部の河床では土砂の堆積が多く,建築用川砂利の採取が盛んに行われている。流域は,モミ,ツガを主とする森林資源が豊富で,近世から木材の伐採が行われ,早川の流れを利用して運ばれた。1952年から早川流域総合開発事業が始められ,西山ダム(奈良田湖)や支流雨畑川の雨畑ダムなどが建設された。上流部は南アルプス国立公園に属し,中流部には西山温泉などの温泉がある。
執筆者:水山 高久
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…芦ノ湖南端に長さ3km,幅3mの大明神川が流入するが,1930年北伊豆地震の際,この川の谷頭より山津波が発生し,河床が埋没したため,河川水の大部分は伏流水となった。芦ノ湖の水は本来湖尻から早川に排出していたが,寛文年間(1661‐73)駿河国深良村名主大場源之丞が外輪山西部の湖尻峠下を貫く箱根用水を掘削して以来,平均日量15万tの水が深良トンネルを経て裾野市方面に流出している。現在では大雨による危険がある時以外,湖尻の逆川水門を経て早川に流出する水はない。…
…人口1977(1995)。赤石山脈の白根山と櫛形山に東西を囲まれ,その間を早川と雨畑(あめはた)川が流れる。面積397km2は県下市町村中最大であるが,総面積の90%以上を山林が占める。…
※「早川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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