表面焼入れ(読み)ひょうめんやきいれ(英語表記)surface hardening
surface quenching

改訂新版 世界大百科事典 「表面焼入れ」の意味・わかりやすい解説

表面焼入れ (ひょうめんやきいれ)
surface hardening
surface quenching

硬さ,耐摩耗性などの性質を向上させるために,歯車,シリンダー内面,クランク軸ジャーナル面などの表面層だけを焼入れする方法で,一般には鋼材に適用される。高周波焼入れ,火炎焼入れ,電解焼入れなどがある。

加熱源として高周波電流によるジュール熱を利用する方法。高周波電流は,スキンエフェクトskin effectといって導電体の表面層だけに電流が流れる性質をもっているので,被処理材表面を瞬間的に高周波電流を通して加熱することができ,内部にはほとんど加熱の影響が及ばない。このため次のような利点がある。(1)直接加熱なので熱効率がよい。(2)短時間処理のため脱炭,酸化がきわめて少ない。(3)内部が変化しないので全体としてひずみが少ない。(4)加工部品をそのまま加熱するので流れ作業による大量生産が可能である。(5)急熱急冷にともなう表層の内部ひずみのため,硬さ,引張強さは普通に焼入れしたものより大きくなる。しかし,設備費が高い,大きな部品には適さないなどの欠点もある。

加熱源として酸素アセチレンガス,プロパンガス,天然ガスなどを用い,このガス炎を被処理材の表面にあて急速に加熱をし,焼入温度に達したのち冷却液を外部から噴射して,表面だけを焼入れする方法。浸炭焼入れなどに比べると作業時間も短く,焼入硬化層の深さも自由に加減できるが,ガス炎の調整がむずかしい。

アーク放電によって生じる発熱現象を利用して焼入れする方法。一般には被処理材を陰極として,焼入れしようとする部分だけを電解液(炭酸カルシウム炭酸ナトリウムなどの水溶液)中に入れ大電流密度で電解を行い,材料表面と電解液との間に生ずるアーク放電を利用して加熱する。表面層がオーステナイト化に十分な温度に達したら電流を切り電解液中で急冷する。電解液が加熱と冷却を兼ねるので装置は簡単であるが,処理条件の設定,結果の再現性に難点がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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