流れ作業(読み)ナガレサギョウ

デジタル大辞泉 「流れ作業」の意味・読み・例文・類語

ながれ‐さぎょう〔‐サゲフ〕【流れ作業】

標準化された大量の製品を生産するのに適した作業組織の一形態。製造工程の順序に従って作業員と機械を配置し、一連の作業を連続的に行って製品を完成させる方式。コンベヤーシステムなど。

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精選版 日本国語大辞典 「流れ作業」の意味・読み・例文・類語

ながれ‐さぎょう‥サゲフ【流作業】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 工場などで、材料ベルトにのせて運ぶ途中で、各自がその分担の作業を加えていく作業方式。コンベヤ‐システム。〔商業経済辞典(1938)〕
  3. 並べてある物を人が動いて順に処理したり、分担部分を処理しながら次々と人に受け渡して完成させたりする作業のやり方。
    1. [初出の実例]「食物のある前を通りながら、これが欲しいと、とって歩く。すべては流れ作業」(出典:アメリカの文化(1951)〈宮城音彌〉食事)

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改訂新版 世界大百科事典 「流れ作業」の意味・わかりやすい解説

流れ作業 (ながれさぎょう)

同一の製品またはサービスに対して連続的に大量の需要がある場合,生産の設備・手段を休止することなく,その製品またはサービスを連続的に大量生産する。この場合,生産の設備・手段をその製品やサービスの生産工程順に配列して流れ生産方式flow production systemを採用するのが有効である。製品や原料が石油やセメントのように流動体・集合体である場合には比較的容易に流れ生産を実施することができ,その流れ生産工程をフロープロセスflow processという。製品や材料が自動車およびその部品のように非流動体・単位体である場合でも流れ生産方式を採用することができ,その流れ生産工程系列をフローラインflow lineという。フローラインはさらにその生産工程が手作業によって行われているか機械化されているかによって,手作業フローラインmanual flow lineとトランスファーラインtransferlineとに分類される。流れ作業は,手作業フローラインおよびその作業組織に限って指称することもあるし,さらには加工対象の運搬手段としてコンベヤを採用しているコンベヤシステムと同じ意味に用いることもある。

 フローライン生産方式が成立するためには,次のような技術的条件が要求される。(1)物の流れの原則 物すなわち資材や製品は,生産工程を通って滑らかに規則正しく流れなければならない。(2)互換性部品の原則 組立工程が支障なく流れるためには,組立てに用いられる部品が十分な精度をもった互換性のあるものでなければならない。(3)最短移動距離の原則 流れの時間的・空間的な消費を最小限にするために生産工程を隣接して配列し,その間をコンベヤで連結するなどのくふうが施される。(4)作業分割の原則 目標とする生産速度(例えば,日産量)とラインバランス(生産工程相互間の作業量のバランス)を達成するために,作業をつごうよく分割できるものでなければならない。

 フローラインで製造される製品は単一品種に限られるわけではなく,類似した製品をバッチbatchで交互に流すこともあれば(multi-product),バッチを形成しないで適宜混合して流す場合もある(mixed product)。

 流れ作業においても,コンベヤシステムにおけると同様な労務上の問題点がある。
タクトシステム →フォード・システム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「流れ作業」の意味・わかりやすい解説

流れ作業
ながれさぎょう

各作業が作業工程に従い、時間的な規則性で進行し、各作業工程で規則的な加工を行いつつ製品を完成させる作業組織をいう。流れ作業を編成するにあたっては、各工程の作業内容が技術的にも品質的にも安定していることが前提となる。すなわち、流れ作業の各工程での時間の変動幅が小さいほど、その工程は安定していることになり、この変動幅が大きすぎると流れ作業は編成できない。したがって、流れ作業の編成は、測定→ばらつき→改善のサイクルを繰り返すことによって、漸次、安定した流れ作業が構築される。流れ作業は流動作業を特徴とするコンベヤー・システム、節動作業を特徴とするタクト・システム、さらにそれらの中間形態に分けられる。

 流れ作業において、各工程間の余力を完全にバランスさせることは、作業条件の制約もあって困難である。バランス・ロスを可能な限り最小にさせるには、作業方法の改善、治工具の活用、半自動化などによる時間短縮などを図るが、ライン編成上のテクニックとしては、〔1〕作業(工程)の分割結合、〔2〕編成人員の増減、〔3〕ライン外作業の充実、〔4〕個人差を活用したライン編成、などが一般に考えられる。さらに流れ作業の編成に際して、工程間つなぎのくふうはとくに重要である。作業の技術的安定や生産管理水準の高低によって、コンベヤーなど、工程間に停滞する部品や製品の量は変化するので、その停滞量の変化を解析し、バッファ的機能をもたせたプール・スペースや、ハンドリングの省力化を加味した流れ作業での工程間つなぎをくふうする必要がある。

[玄 光男]

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百科事典マイペディア 「流れ作業」の意味・わかりやすい解説

流れ作業【ながれさぎょう】

製品または部品の生産工程順に機械と労働者を配列し,被加工品の移動と作業の進行が時間的に統制される作業組織の総称。代表的なものとしてコンベヤシステムがある。また各工程がいくつかのタクト(拍節)に分けられ,それぞれは静止したままで行われ,一定時間ごとに指揮に合わせて一斉に次のタクトに移行するタクトシステム,両者の中間的な方式で,部品が組ごとに自動的に運搬されるロットシステムなどがある。
→関連項目コンベヤ産業合理化フォード・システム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「流れ作業」の意味・わかりやすい解説

流れ作業
ながれさぎょう
conveyor system

一定のライン (工程順序) に沿って部品の移動と組立ての作業を進め,次第に完成品にもってゆく工業生産方法。コンベヤの側面に配置された作業者が,標準化された作業方式に従って,調整された速度のコンベヤから半製品を受取り,一定の管理下工程で加工,組立てを行う。各部品は複数のラインで運ばれ,次第に1本にまとまって完成品となる。 1913年アメリカのフォード自動車会社でこの方法を実施し,非常に成功したので,以後他の企業にも普及した。自動車のほか,家庭用電化製品,カメラ,ミシンなどの大量生産に多く用いられる。また最近は,その工程中に産業用ロボットを組込み,生産性向上,品質管理,省力化を進める傾向が強い。しかし一面,このシステムは作業者の労働のノルマ化につながるとする批判も出ている。

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世界大百科事典(旧版)内の流れ作業の言及

【アメリカ合衆国】より

…さらに20世紀に近づくと,今度は機械の作業速度に合わせて人間の標準作業量を管理するといった生産の合理化が追求されて,それまでの大量生産方法は機械と人間を組織的に管理する技術にまで進んだ。この方法は通常〈科学的管理法〉と呼ばれ,20世紀初めヘンリー・フォードにより完成された〈流れ作業〉方式とともに,今日のオートメーションにいたるアメリカ的機械技術の特徴をつくりあげた。ところで,この大量生産には当然,大量販売と消費が前提とされるが,とくに19世紀後半に拡大した国内市場は,これに適合する規格化された大衆品の市場であった。…

※「流れ作業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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