同一の製品またはサービスに対して連続的に大量の需要がある場合,生産の設備・手段を休止することなく,その製品またはサービスを連続的に大量生産する。この場合,生産の設備・手段をその製品やサービスの生産工程順に配列して流れ生産方式flow production systemを採用するのが有効である。製品や原料が石油やセメントのように流動体・集合体である場合には比較的容易に流れ生産を実施することができ,その流れ生産工程をフロープロセスflow processという。製品や材料が自動車およびその部品のように非流動体・単位体である場合でも流れ生産方式を採用することができ,その流れ生産工程系列をフローラインflow lineという。フローラインはさらにその生産工程が手作業によって行われているか機械化されているかによって,手作業フローラインmanual flow lineとトランスファーラインtransferlineとに分類される。流れ作業は,手作業フローラインおよびその作業組織に限って指称することもあるし,さらには加工対象の運搬手段としてコンベヤを採用しているコンベヤシステムと同じ意味に用いることもある。
フローライン生産方式が成立するためには,次のような技術的条件が要求される。(1)物の流れの原則 物すなわち資材や製品は,生産工程を通って滑らかに規則正しく流れなければならない。(2)互換性部品の原則 組立工程が支障なく流れるためには,組立てに用いられる部品が十分な精度をもった互換性のあるものでなければならない。(3)最短移動距離の原則 流れの時間的・空間的な消費を最小限にするために生産工程を隣接して配列し,その間をコンベヤで連結するなどのくふうが施される。(4)作業分割の原則 目標とする生産速度(例えば,日産量)とラインバランス(生産工程相互間の作業量のバランス)を達成するために,作業をつごうよく分割できるものでなければならない。
フローラインで製造される製品は単一品種に限られるわけではなく,類似した製品をバッチbatchで交互に流すこともあれば(multi-product),バッチを形成しないで適宜混合して流す場合もある(mixed product)。
流れ作業においても,コンベヤシステムにおけると同様な労務上の問題点がある。
→タクトシステム →フォード・システム
執筆者:新宮 哲郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
各作業が作業工程に従い、時間的な規則性で進行し、各作業工程で規則的な加工を行いつつ製品を完成させる作業組織をいう。流れ作業を編成するにあたっては、各工程の作業内容が技術的にも品質的にも安定していることが前提となる。すなわち、流れ作業の各工程での時間の変動幅が小さいほど、その工程は安定していることになり、この変動幅が大きすぎると流れ作業は編成できない。したがって、流れ作業の編成は、測定→ばらつき→改善のサイクルを繰り返すことによって、漸次、安定した流れ作業が構築される。流れ作業は流動作業を特徴とするコンベヤー・システム、節動作業を特徴とするタクト・システム、さらにそれらの中間形態に分けられる。
流れ作業において、各工程間の余力を完全にバランスさせることは、作業条件の制約もあって困難である。バランス・ロスを可能な限り最小にさせるには、作業方法の改善、治工具の活用、半自動化などによる時間短縮などを図るが、ライン編成上のテクニックとしては、〔1〕作業(工程)の分割結合、〔2〕編成人員の増減、〔3〕ライン外作業の充実、〔4〕個人差を活用したライン編成、などが一般に考えられる。さらに流れ作業の編成に際して、工程間つなぎのくふうはとくに重要である。作業の技術的安定や生産管理水準の高低によって、コンベヤーなど、工程間に停滞する部品や製品の量は変化するので、その停滞量の変化を解析し、バッファ的機能をもたせたプール・スペースや、ハンドリングの省力化を加味した流れ作業での工程間つなぎをくふうする必要がある。
[玄 光男]
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…さらに20世紀に近づくと,今度は機械の作業速度に合わせて人間の標準作業量を管理するといった生産の合理化が追求されて,それまでの大量生産方法は機械と人間を組織的に管理する技術にまで進んだ。この方法は通常〈科学的管理法〉と呼ばれ,20世紀初めヘンリー・フォードにより完成された〈流れ作業〉方式とともに,今日のオートメーションにいたるアメリカ的機械技術の特徴をつくりあげた。ところで,この大量生産には当然,大量販売と消費が前提とされるが,とくに19世紀後半に拡大した国内市場は,これに適合する規格化された大衆品の市場であった。…
※「流れ作業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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