西村市郎右衛門(読み)にしむら・いちろうえもん

朝日日本歴史人物事典 「西村市郎右衛門」の解説

西村市郎右衛門(初代)

没年元禄9.9.3(1696.9.28)
生年:生年不詳
延宝2(1674),3年から天明年間(1781~89)まで続いた京都書肆の初代。名は久重,号は未達,嘯松子など。市郎右衛門は代々の称。『誹家大系図』に,もと山岡元隣門と記される俳諧師でもあったが,特に書肆作家として著名。江戸の西村半兵衛と結び,蕉門初期から其角編を中心とする俳書を多数出版した。天和から貞享年間(1681~88)には西鶴を意識した『宗祇諸国物語』『諸国心中女』など,西村本と呼ばれる一連浮世草子を書き,西鶴作品の人気に対抗しようとしたが,質的にはおよばなかった。刊行書には,近松門左衛門の弟・岡本一抱の医学書や立花書,料理書などの実用書が多く,江戸町人層をも読者層として意識した活動を行った。<参考文献>中島隆「西村市郎右衛門未達について」(『近世文芸』32号),湯沢賢之助「西村市郎右衛門(代々)の出版・文筆活動」(『言語と文芸』88号)

(安永美恵)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「西村市郎右衛門」の意味・わかりやすい解説

西村市郎右衛門 (にしむらいちろうえもん)
生没年:?-1696?(元禄9?)

江戸前期の京都の本屋俳人,浮世草子作者。名は久重。俳号未達,嘯松子(しようしようし)。《新御伽婢子(しんおとぎぼうこ)》(1683),《宗祇諸国物語》(1685),《好色三代男》(1686)などの浮世草子を執筆,一時期西鶴と対抗し,文学史上〈西村本〉と呼ばれるが,西鶴には遠く及ばない。俳人としては凡常の存在であるが,蕉門の俳書を時流に先がけて多く出版。後年は時流に乗り好色本を多く刊行。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「西村市郎右衛門」の解説

西村市郎右衛門 にしむら-いちろうえもん

?-1696 江戸時代前期の版元,浮世草子作者。
京都で開業。西村本とよばれる浮世草子のほか,俳書,仮名草子,医書などを多数刊行。俳諧(はいかい)をよくした。元禄(げんろく)9年9月3日死去。名は久重。号は未達,嘯松子など。作品に「好色三代男」「浅草拾遺物語」,編著に「俳諧関相撲」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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