朝日日本歴史人物事典 「西村市郎右衛門」の解説
西村市郎右衛門(初代)
生年:生年不詳
延宝2(1674),3年から天明年間(1781~89)まで続いた京都書肆の初代。名は久重,号は未達,嘯松子など。市郎右衛門は代々の称。『誹家大系図』に,もと山岡元隣門と記される俳諧師でもあったが,特に書肆作家として著名。江戸の西村半兵衛と結び,蕉門初期から其角編を中心とする俳書を多数出版した。天和から貞享年間(1681~88)には西鶴を意識した『宗祇諸国物語』『諸国心中女』など,西村本と呼ばれる一連の浮世草子を書き,西鶴作品の人気に対抗しようとしたが,質的にはおよばなかった。刊行書には,近松門左衛門の弟・岡本一抱の医学書や立花書,料理書などの実用書が多く,江戸町人層をも読者層として意識した活動を行った。<参考文献>中島隆「西村市郎右衛門未達について」(『近世文芸』32号),湯沢賢之助「西村市郎右衛門(代々)の出版・文筆活動」(『言語と文芸』88号)
(安永美恵)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報