本屋(読み)ホンヤ

デジタル大辞泉 「本屋」の意味・読み・例文・類語

ほん‐や【本屋】

書物を売る店。また、その業者出版社をさすこともある。書店
(「ホン屋」とも書く)映画業界などで、脚本・シナリオを書く人。台本作家。
屋敷の中で主となる建物母屋おもや
[類語](1書店書房書林書肆

ほん‐おく〔‐ヲク〕【本屋】

主要な建物。母屋おもや

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精選版 日本国語大辞典 「本屋」の意味・読み・例文・類語

ほん‐や【本屋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 建物の主な部分。母屋。ほんおく。
    1. [初出の実例]「百姓屋敷の本屋の跡は石ばかりにて」(出典:集義和書(1676頃)一六)
  3. 書物をあきなう家。また、版木を彫ったり、印刷したりして製本して売り出す店。また、その人。書肆。書林。
    1. 本屋<b>②</b>〈人倫訓蒙図彙〉
      本屋人倫訓蒙図彙
    2. [初出の実例]「本屋(ホンヤ)〈略〉今は板にこれを彫也」(出典:人倫訓蒙図彙(1690)四)
  4. 脚本やシナリオを書く人の映画界などでの俗称。

ほん‐おく‥ヲク【本屋】

  1. 〘 名詞 〙 建物の主な部分。母屋。ほんや。
    1. [初出の実例]「中間の小門を開けて、本屋の裏手へ歩を運んだ」(出典:良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉前)

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改訂新版 世界大百科事典 「本屋」の意味・わかりやすい解説

本屋 (ほんや)

本屋とは〈物の本屋〉からでた称である。古代大陸から伝来した暦本を〈こよみのためし〉と訓読した例がある。〈物の本〉とは,物事のためし,つまり前例手本となることが書いてある書物の意であった。したがって〈物の本屋〉=本屋は,宗教書,学問書,教養書などの書物を商う者の称であった。これに対して,娯楽的な書物は草紙(草子)といわれ,これを商う者は草紙屋絵草紙屋と称された。江戸時代には総称して本屋ともいったが,正式には取扱い品目,名称が区別されていた。浄瑠璃本,絵草紙,浮世絵などは草紙屋(絵草紙屋,江戸では地本(じほん)問屋ともいう)が扱った。本屋も草紙屋も,まず京都に室町後期ころには現れたらしいが,本格的に印刷出版,販売を専業とする本屋が出現したのは江戸時代の初めであった。まず,朝鮮渡来の活字印刷で出版を営む本屋が現れたがごく少数で,1620年代以後,木版で出版を営む本屋が続出し,ここに日本における書物出版販売業が成立した。やがて草紙屋も本格的な活動を開始した。

 元禄時代とその前後は,読書人口が庶民層にまで拡大し,出版業が著しく成長した時期である。京都では本屋200軒といわれ,そのうち数十軒は常時本格的な出版を営んでいた。なかでも和文古典を主とした出雲寺和泉掾(いずもじいずみのじよう),仏教書を主とした平楽寺村上勘兵衛,草紙類から浮世草子に進出した八文字屋八左衛門などが著名である。当時,京都では約8000点の書物が刊行されており,中国・日本の物の本,つまり古典類はすべて印刷本として売り出されていた。大坂は20軒ほどであったが,井原西鶴の浮世草子や近松門左衛門浄瑠璃本,さらに日用の実用書などを出版し,ベストセラー現象を作り出した。18世紀後半には大坂の本屋は100軒をこえた。江戸ははじめ上方有力本屋の出店が多かったが,18世紀後半から江戸で成長した本屋が活躍した。《武鑑》や江戸地図,さらに漢学・蘭学の本を出した須原屋茂兵衛とその一門,歌麿や写楽の浮世絵を刊行し,黄表紙にベストセラーを出した蔦屋重三郎(つたやじゆうざぶろう)など特色ある本屋が現れた。江戸の本屋は19世紀初めで80軒ほどであった。彼らは新しい出版物の開発に熱心であった。蘭学書,浮世絵(錦絵),黄表紙,合巻,滑稽(こつけい)本,人情本,読本などである。しかし幕府は,こうした出版の動向に警戒の目をむけ,享保・寛政・天保の改革政治のときは,とくに出版統制を強化したので,筆禍事件がしばしばおこった。京坂,江戸のほか,全国各地の主要な町々にも本屋が現れ,幕末に近づくほど多くなり,書物の販売網も全国化した。なお,貸本屋の活動も注目される。例えば,江戸では19世紀初めに600軒以上の貸本屋が営業しており,地方でも城下町,宿場町,温泉場など,至る所に現れて,読書人口の拡大に大きな役割を果たした。
貸本屋 →出版 →書店
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「本屋」の意味・わかりやすい解説

本屋
ほんや

書物、草紙(そうし)類の出版販売業者。すでに平安時代の京都で経師による写本販売があったが、専業本屋の出現は室町時代末期で、京都に絵草紙屋があり、手書きの御伽草子(おとぎぞうし)や奈良絵本を売った。本格的な書物出版販売業の成立は、江戸時代の元和(げんな)・寛永(かんえい)期(1615~1644)で、古活字版ついで木版で出版を営む本屋が、京都を中心に輩出した。元禄(げんろく)年間(1688~1704)前後は出版業の大発展期で、京都では100余軒、大坂では20余軒、江戸では約40軒の本屋が活動し、名古屋、金沢、仙台などにも現れた。初め、仏書、儒学書、和文古典の刊行が多かったが、俳諧(はいかい)書、仮名草子、浮世草子、浄瑠璃(じょうるり)本、重宝記(ちょうほうき)などの新作物も多く刊行され、井原西鶴(さいかく)や近松門左衛門(もんざえもん)の作品はベストセラー現象を呈した。

 本屋のなかでも、仏書、儒学書、和文古典など(これらを物(もの)の本といった)を主として出版する業者を、物の本屋、書物屋、書物問屋などといい、絵草紙類を出す絵草紙屋と区別されていた。近世後期は、大坂、江戸の出版業が台頭し、常時それぞれ数十軒の本屋が活動していた。江戸独特の浮世絵、黄表紙(きびょうし)、中本(ちゅうほん)類を出版した絵草紙屋は地本(じほん)問屋とよばれ、常時10余軒が活動していた。著名な本屋として出雲寺和泉掾(いずもじいずみのじょう)(京都。和文古典、武鑑)、平楽寺(へいらくじ)村上勘兵衛(京都。仏書)、須原屋(すわらや)茂兵衛(江戸。武鑑と江戸絵図)、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)(江戸。歌麿(うたまろ)・写楽の浮世絵)などがあげられる。

[今田洋三]

『今田洋三著『江戸の本屋さん』(1977・日本放送出版協会)』『宗政五十緒著『近世京都出版文化の研究』(1982・同朋舎出版)』


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世界大百科事典(旧版)内の本屋の言及

【出版】より

…書物は古代以来,粘土板,パピルス,羊皮紙,絹,それに紙など,さまざまな材料を用いて,筆写,印刷などの手段により,さまざまな形態で作られ,時間と空間の制約を超えて伝えられてきた。その間,印刷以前の時代にも,写本の生産,販売,仲介を行う本屋が発生したし,中世以降になると,中国,朝鮮,日本における木版印刷技術の進歩,ヨーロッパにおけるグーテンベルクの活版印刷術の開発によって,出版活動は盛んになったが,出版が不特定多数の読者に対して,見込生産と宣伝,販売を大量かつ積極的に行うという意味で,近代出版に脱皮するのは,社会の近代化の過程においてであり,とくに大衆社会の出現によってである。したがってイギリスで出版者(パブリッシャーpublisher)という言葉が定着したのは近々18世紀のことであり,それまでは本屋(ブックセラーbook‐seller,あるいはステーショナーstationer)と呼ばれるのが一般的であった。…

【書店】より

…書籍・雑誌などの小売業。本屋ともいう。江戸期初め民間で出版活動がはじまってから明治初期までは,板元(はんもと)(版元,書肆(しよし),本屋)が編集から製作,卸,小売,古書の売買を一手におこなっていた。…

※「本屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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