見返(読み)みかえし

精選版 日本国語大辞典 「見返」の意味・読み・例文・類語

み‐かえし ‥かへし【見返】

〘名〙
① 見返すこと。
曾我物語(南北朝頃)四「まなこの見かへし、かほたましひ、すこしもたがふ所なし」
② 和装本の表表紙(おもてびょうし)の裏側。書名、著者名、発行者名、発行年などを記す。装飾に絵を描くこともある。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
③ 本の表紙と中身の接着を補強するため表・裏両表紙の内側に貼られた紙。二ページ大で一方は表紙の裏側に貼られ、もう一方は本の中身に沿って遊び紙となる。
※三四郎(1908)〈夏目漱石〉三「本の見返(ミカヘ)しの空いた所に」
洋裁で、襟ぐり、すそ、袖口あきの部分などの始末に、裏側に当てられる布。また、その部分。多くは共布
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上「合羽表地よりもはんゑりにはり込、黒の本天の見かへしをばかに長く付る」

み‐かえ・す ‥かへす【見返】

〘他サ五(四)〙
後方を、ふりむいて見る。ふりかえる。見返る。
※宇治拾遺(1221頃)一「はやくきつね、み返しみ返しして、前にはしり行」
② 一度見たものをあらためて見直す。繰り返して何度も見る。
人情本・英対暖語(1838)五「他人が私に脊後指をさして噂をするから何卒その人達の㒵を見返す様にしたひ」
③ 見られた人を、逆にこちらからも見る。また、見られた仕返しに見る。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「『如何もねえ』と母親はお島と見合ふ、『然うねえ』とお島も睼(ミカヘ)すばかり」
④ 以前にあなどりを受けた相手に、仕返しとして、立派になった自分を誇示してみせつける。
※或る女(1919)〈有島武郎〉後「世間の人を見返しておやり」

み‐かえ・る ‥かへる【見返】

〘他ラ五(四)〙
① うしろを、ふりむいて見る。ふりかえってみる。かえりみる。
※観智院本三宝絵(984)中「見かへりたれば、男三人附て来る」
② 心にかける。面倒をみる。世話する。かえりみる。
※今鏡(1170)四「宇治殿の御ともにおはしけるに、わざと据ゑまさむとおぼして、みかへりて久しくものし給ひけるにも」
③ 思い直す。思い返す。
※浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)一「思ひ切てはいかな事見返らぬ夫のお心」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「人の感情を弄んだの本田に見返ったのといろんな事を云って讒謗して」

み‐かえり ‥かへり【見返】

〘名〙
① 見返ること。ふりかえること。
※宇治拾遺(1221頃)四「此女、時々はみかへりなどすれども」
② 相手のしてくれたことにこたえて何かをすること。特に、保証・担保・代償としてさし出すこと。また、そのもの。
※経済実相報告書(1947)二「食糧輸入等の見返りとして輸出に殆んど全部を振向けねばならぬし」

みえ‐かえ・る ‥かへる【見返】

〘自ラ四〙 繰り返し見える。なんべんも見える。
※万葉(8C後)一二・二八九〇「ぬばたまの夜を長みかも吾が背子が夢に夢にし所見還(みえかへる)らむ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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