親ロシア派(読み)しんろしあは

知恵蔵 「親ロシア派」の解説

親ロシア派

ウクライナ政変に揺れる同国内で、EU(欧州連合)につくのかロシアにつくのかを巡り混乱するなか、ロシアの側につきたい人々のこと。限定的には、東ウクライナに住むロシア系ウクライナ人から成り「ドネツク人民共和国」を呼号するなどして、ウクライナからの分離・独立やロシアとの併合を求めて過激な行動をとる武装勢力を指す。
2004年のオレンジ革命以降、ウクライナ国内では親欧米派と親ロシア派の対立が続いていた。14年2月、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領が国外逃亡したことによって、ウクライナ議会はヤヌコビッチ大統領を解任し親欧米派のトゥルチノフを大統領代行とした。ウクライナの南端にあり住民の6割をロシア系が占めるクリミア自治共和国では、分離・独立の動きが活発化、同年3月11日には議会がクリミア独立宣言を表明した。その後の住民投票を経てクリミア共和国として独立。同月18日には連邦を構成する主権国家としてロシアに編入した。この動きはクリミアのみにとどまらず、ウクライナ東部ドネツィク州などに波及、地方政府や警察庁舎の親ロシア派による占拠が拡大。これを制圧しようとするウクライナ政府軍と親ロシア武装勢力との戦闘が続き、武力紛争となった。
ウクライナ政変混迷と武力衝突激化の中、14年7月17日ウクライナ東部(「ドネツク人民共和国」上空)でマレーシア航空の旅客機が墜落し乗員乗客298人全員が死亡した。ウクライナ政府は親ロシア派武装勢力がロシアから借りた武器で撃墜したとする一方、「ドネツク人民共和国」は関与を否定しウクライナ空軍が撃墜したと、双方の主張は対立している。また、アメリカ国家情報長官室が、ウクライナ東部での戦闘でロシア軍が介入し、自国領内からウクライナ軍に砲撃を加えたという証拠写真を7月27日に公表してロシアの関与を強く非難。アメリカ政府はロシアに対する制裁を更に強化することを視野に入れ、ロシアに対する圧力を強めている。
ウクライナ政府軍は攻勢を強めており、親ロシア派はロシアが支援を強めない限り親ロシア派武装勢力に勝機はない。ロシア国内及び国際世論や経済関係の中で、親ロシア派をどこまで支援し東ウクライナをどうするかなど、ロシアのプーチン大統領の動向が注目されている(14年8月時点)。

(金谷俊秀  ライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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