親句(読み)しんく

精選版 日本国語大辞典 「親句」の意味・読み・例文・類語

しん‐く【親句】

〘名〙 短歌で、五七五七七の第一句から第五句までの続き具合の密接なもの。文意が密接に続くのを「正の親句」、母音または子音の同じ音で続くのを「響きの親句」という。連歌俳諧では、これと同じ意味で発句平句など各句の内部のことばの続き具合についていうが、さらに、二句間の付合(つけあい)において、前句の姿やことばにすがって付ける付け方についてもいう。疎句に対する語。
※竹園抄(13C後)「親句事 是又歌の中の秘事 ゆゆしき大事なり」 〔俳諧・俳諧小式(1662)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の親句の言及

【元禄俳諧】より

…それは主観的な色どりの濃い風流志向であり,いやみに流れると〈かゝる世は蝶かしましき羽音かな 信徳〉(和及編《雀の森》1690),〈御代の春蚊屋の萌黄にきはまりぬ 越人〉(元禄4年歳旦(さいたん)帳)などになり,詩的に結晶すると〈凩(こがらし)の果はありけり海の音 言水(ごんすい)〉(言水編《新撰都曲(みやこぶり)》1690),〈うぐひすの細脛よりやこぼれむめ 才麿〉(文十編《よるひる》1691)や,芭蕉らの数々の佳吟となった。連句の付合(つけあい)では“疎句(そく)”が重んじられ,心や景気による“うつり”が中心となり,蕉風の“匂ひ”“響き”“走り”など隠微な付合の呼吸を生み育てたが,井原西鶴らはこれを連歌への回帰とみて理解を示さず,故事・古典のことばや縁語を“あしらひ”とする“親句(しんく)”の俳諧に終始した。元禄末年になると,疎句化の傾向はますます進み,“前句付(まえくづけ)”の流行とあいまって,付合の疎外を招き,一句立て偏重の思想を育て,やがて連句を解体へと導くに至るのである。…

【西鶴】より

…速吟の傾向はこのころからいっそう強まり,77年に1日1600句の独吟《西鶴俳諧大句数(おおくかず)》,80年に同じく4000句の独吟《西鶴大矢数(おおやかず)》を成就した。80年代(天和・貞享期)の俳諧は,漢詩文もどきのことば遊びから優美な連歌調へ,〈親句(しんく)〉の付合(つけあい)から〈疎句(そく)〉の付合へと急速に移り変わったが,今様の風俗を俳言と俳言の緊密な付合上に描き出そうとする親句主義の西鶴はこれについてゆけず,一時俳諧の制作から遠ざかった。しかし俳言による表現意欲は衰えず,一般に俳人の転合書(てんごうがき)というかたちで存在した散文の制作に力を入れ,82年(天和2)《好色一代男》を完成,これが浮世草子の第1作となった。…

【付合】より

…芭蕉自身にも〈付句十七体〉の伝授があったという(《去来抄》)。しかし,細分化し複雑化した付合も,煮つめれば,〈奥山に船漕ぐ音は聞ゆ也/なれる木のみやうみ渡るらん(紀貫之)〉(《菟玖波集》)のような,ことばの応接による単純な謎解き問答体を原初の風体とする〈親句(しんく)〉と,〈青天に有明月の朝ぼらけ(去来)/湖水の秋の比良のはつ霜(芭蕉)〉(《猿蓑》)のような,余情豊かな景曲体を典型とする〈疎句(そく)〉の2体に整理される。付合文芸の2系列である連歌も俳諧も,その歴史は親句から疎句への推移としてとらえられるであろう。…

※「親句」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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