言掛(読み)いいかける

精選版 日本国語大辞典 「言掛」の意味・読み・例文・類語

いい‐か・ける いひ‥【言掛】

〘他カ下一〙 いひか・く 〘他カ下二〙
① 人に向かって、言葉、手紙、歌などで物を言う。話しかける。
※竹取(9C末‐10C初)「物をだにいはんとて、いひかくれどもことともせず」
② まだ十分言い尽くさないで話の中途でやめる。言い残す。
※ささめごと(1463‐64頃)上「此の三句は、前の下の句に曲の心ありてもみくどきたる故に、付句を篇・序・題になしていひかけて前句にゆづり侍り」
無実のことを、その人の責任のように偽り言う。言いがかりをつける。難癖をつける。
蔭凉軒日録‐文明一九年(1487)二月一四日「石松法師云者、於小河等竹首座懸虚名
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「とがを云かけられて殺されかせうずらうぢゃほどに」
④ あることを話しはじめる。言いはじめる。
※桐一葉(1894‐95)〈坪内逍遙〉四「『最前からお前様を』いひかくるを目でおさへ」
⑤ 歌などで、一語を二語、または、それ以上の意にわたるものとして用いる。掛詞を用いる。

いい‐かけ いひ‥【言掛】

〘名〙
① 人に向かって話を仕掛けること。話し始めること。
② 話を始めて、その途中であること。話しかけ。
③ 無実のことを、その人の責任として責め立てること。言いがかり。なんくせ。
※虎寛本狂言・饅頭(室町末‐近世初)「身共を田舎者じゃと思ふて云かけをしおるか」
④ 「なぞなぞ」の問いかけの言葉。その解答を「心」というのに対するもの。
※虎寛本狂言・薩摩守(室町末‐近世初)「『心はさつまの守』『それは云かけで合点じゃ。其さつまの守の心をおしやれといふに』」
和歌連歌俳諧などで用いられる修辞法の一種。同音であることを利用して、一語に二つの意を兼ねさせるもの。掛詞。
※わらんべ草(1660)二「同じくうたひは、〈略〉いひかけ、秀句、枕ことば、上略中略、下略、字なまりども多し」

いい‐かか・る いひ‥【言掛】

〘自ラ四〙
① 口に出して言い始める。
※栂尾明恵上人伝記(1232‐50頃)下「法文云ひかかり給ひては、常に時の移るを忘れ給ふこと此の如くぞありける」
② 人にものを言ってかかわりを持つ。言い寄る。
源氏(1001‐14頃)玉鬘「うるさきたはぶれこといひかかり給ふを」
③ (「いいがかる」とも) いったん口に出したために、あとに引けなくなる。言い出して意地になる。
※虎明本狂言・空腕(室町末‐近世初)「そうじてあの人は、いひかかった事は聞ぬ人じゃによって」
④ (「いいがかる」とも) むりなことを言って困らせる。なんくせをつける。言いがかりをつける。
曾我物語(南北朝頃)四「されども、いひかかりたる事なれば、ふるまひしかるべからず」

いい‐がかり いひ‥【言掛】

〘名〙
① いったん言い出したために、あとに引けなくなること。また、言い合って互いに意地になること。
※四座役者目録(1646‐53)下「間(あひ)の所、早鼓にて出んと云。小左衛門は早鼓にて無しと争ふ。〈略〉されども、云がかり、今は早鼓うたでも出、又うたせても出、かわりがわりにする」
② 人を責め困らせるために言い立てる、事実無根口実。なんくせ。いいかけ。
※虎寛本狂言・居杭(室町末‐近世初)「イヤ、おのれは最前から色々の云掛をする」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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