改訂新版 世界大百科事典 「設備共同廃棄」の意味・わかりやすい解説
設備共同廃棄 (せつびきょうどうはいき)
不況によって大幅な生産過剰となり,製品の価格低下が著しい場合に,業界の大部分の企業が協調して,各企業あるいは企業グループ単位で一定割合の生産設備を使用できないように処分すること。その目的は生産制限によって,製品価格の低下を防ぎ,企業の収益悪化を止めることにある。
操業短縮も協調的な減産行為であるが,景気回復に伴い需要が増加すれば,操短(減産)をやめて,生産を増加させることができる。これに対し,設備共同廃棄では生産設備を二度と使えないように処分してしまっているから,生産増加はできない。したがって,設備共同廃棄では,その業界の需要は長期的に大幅な増加が見込めないことが前提になる。
代表的な例は,2度の石油危機によって国際競争力を喪失した日本のアルミニウム精錬業界が特定不況産業安定臨時措置法(1978年5月公布)に基づき1979-82年にそれまでの年産164万tの設備を70万tまで縮小したケースである。また,中小企業において,内外の経済環境の変動に伴い著しい影響を受ける分野では,需要の減少から中小企業者の競争が激化し,共倒れの危険性が出てくる。しかし,中小企業者の場合には自力で設備廃棄するに十分な資力がないため,協業組織などをつくって共同廃棄すれば,中小企業事業団から資金援助を受けられる制度がある。
執筆者:下田 雅昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報