日本大百科全書(ニッポニカ) 「訴訟承継」の意味・わかりやすい解説
訴訟承継
そしょうしょうけい
訴訟物についての紛争主体性が、従来の当事者から第三者へ承継された場合に、訴訟上の地位も承継すること。紛争主体たる地位の移動があったときに、従前の当事者間で訴訟を進行させ、判決を出しても、その判決はむだになるし、といってまったく新たに、承継人が当事者となった訴訟を提起するというのも、当事者の既得の訴訟上の地位の無視、不経済という点で問題である。そこで、承継人は従前の当事者の訴訟上の地位、従前の訴訟進行の結果を、有利・不利を問わず承継することができるとしたのである。この結果、承継人は、従前の弁論、証拠調べの結果を承継し、時効中断、期間遵守の効力も受け、あるいは、前主が時機に後れたとして主張できなかった攻撃防御方法については、やはり主張できない。
訴訟承継の種類としては、当然承継(または法定承継)と係争物の譲渡とがある。前者は、承継原因の発生とともに当然に当事者が交替する場合で、たとえば当事者の死亡により相続人・受遺者が、法人の合併により新法人が承継する場合である。後者は、紛争主体たる地位の承継があっても当然には当事者が交替せず、承継人あるいはその相手方の意思に基づいて承継人が当事者になる場合である。法律は権利承継人の参加承継、義務承継人の引受承継および義務承継人の参加承継と権利承継人の引受承継を規定している(民事訴訟法49条~51条)が、これらにより、権利承継・義務承継を問わず、承継人が承継時の訴訟状態を自己に有利(勝てそうだ)と思えば積極的に参加承継し、不利(負けそうだ)と思えば参加しないから、相手方の申立てにより訴訟を引き受けさせることができるよう規定している。この場合、前主は訴訟から脱退することもできるが、判決効は脱退者にも及ぶ。
[本間義信]