すでに他人間に係属している訴訟に、訴訟外の第三者が加入していくこと。この第三者は、他人間の訴訟の結果いかんによっては自己の利益に影響が及ぶ可能性があるときに、参加を認められる。
[本間義信]
訴訟参加には、補助参加と当事者参加の区別があり、後者はさらに独立当事者参加と共同訴訟参加に分かれる。
[本間義信]
補助参加とは、他人間に訴訟が係属しているときに、その訴訟の結果について利害関係を有する第三者が、訴訟当事者の一方を補助してこれを勝訴させることによって自己の利益を守るために、訴訟に参加することをいう(民事訴訟法42条)。自己の利益とは、当事者の一方を勝訴させることによって受ける法的利益をいう。たとえば、債権者から主債務者に対する貸金返還請求訴訟において、主債務者が勝訴するかどうかについて保証人は利害関係を有する(保証債務は主債務の存在を前提とする)。あるいは、共同不法行為(交通事故等)による損害賠償請求の共同被告(加害者AとB)のうち、第一審でAが敗訴し、Bが勝訴した場合に、Bも敗訴して損害賠償責任を負うことになれば、Aがこれに求償できるという利益を有するから、Aは、自己の敗訴判決に控訴しないときは原告(被害者)側に補助参加する利益を有する。しかし、この利益は法的利益でなければならないから、感情的利害関係はもちろん、当事者の一方が敗訴したら財産が減少するからこれに対して強制執行することが困難になる、あるいは贈与を受けることができなくなるというような、単なる経済的利害関係を有する場合は、補助参加の利益はない。前記の例において、訴訟当事者の受けた判決の効力が補助参加人に及ぶわけではない。当事者の訴訟の勝敗によって実体法的に利害関係をもてば、補助参加できるのである。補助参加人は、補助参加のときにおいて被参加人(訴訟当事者)のできるいっさいの訴訟行為、すなわち攻撃防御方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起等ができる。ただ、訴訟の当事者は被参加人であり、参加人(補助参加人)はあくまでも被参加人を補助することを通して自己の利益を守るのであるから、被参加人の訴訟行為に抵触する訴訟行為をすることはできず、もしこれをしてもその効力を有しない。抵触しない訴訟行為は、被参加人がしたのと同じ効力を有する。参加人が参加した結果、裁判所が出した本案判決(門前払いではない、請求たる権利・義務の存否についての判断をした判決)は、一定の要件の下に、参加人に対しても効力を有する(民事訴訟法46条)。
[本間義信]
たとえば、債権者Zが債務者Xの不動産について強制執行の申立てをし、強制競売(けいばい)開始決定を得たのに、その不動産についてYがXを相手に所有権移転登記抹消請求訴訟を提起したような場合、XとYが共謀してZの強制執行を妨害しようとしていることもありうる。また、XとYの間である土地の所有権をめぐって所有権確認の訴えが係属しているときに、訴外のZもその土地が自分のものと考えている可能性もある。このようなとき、Zは、X・Y間の訴訟の結果により権利を害されると主張し、あるいは訴訟の目的となっている権利が自己の権利であることを主張して、その訴訟の当事者の双方または一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる(民事訴訟法47条、前者の場合は詐害防止参加、後者の場合は権利主張参加という)。これにより、参加者Zの利益を守り、X・Y・Z三者間の紛争を一挙に解決しようというわけである。これを独立当事者参加という。この参加が行われた場合に、従来の当事者XまたはYの一方が争う気がなければ相手方の承諾を受けて訴訟から脱退することもできる(訴訟脱退という)。この場合、判決は脱退した当事者に対してもその効力を有する。
現に訴訟で争われている権利を譲り受けたことを主張する者(権利承継人)は独立当事者参加の規定により参加をすることができ(同法49条、権利を譲り渡した従前の当事者の一方が訴訟から脱退すれば、当事者の交替になる)、参加すると、前当事者のそれまでの訴訟追行の結果を承継することになる。訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務を承継したときは(義務承継人)、裁判所は、当事者の申立てにより、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる(同法50条)。また、義務承継人も従前の訴訟追行の結果が自己に有利である(勝てる)と思えば自ら訴訟参加できる。一方、権利承継人であっても不利(負ける)と思えば積極的には参加しないであろうから、この場合、当事者の申立てにより、承継人に訴訟を引き受けさせることができる(同法51条)。なお、義務承継人の場合も、訴訟脱退、訴訟追行の結果の承継は、権利承継人の場合と同様である。
[本間義信]
民事訴訟における訴訟参加は任意参加であるが、行政訴訟においては、それに加えて職権による強制参加がある。抗告訴訟の請求認容判決は対世的効力を有する(行政事件訴訟法32条1項)から、訴訟の結果につき直接の利害関係を有するが訴訟の当事者になっていない者にも、認容判決の効力は及ぶ。このような第三者に攻撃防御方法の提出の機会を与え、その者に当事者権を保障する必要がある。そのために、裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者もしくはその第三者の申立てによりまたは職権で、その第三者を訴訟に参加させることができる(同法22条1項)。たとえば、労働組合または労働者の救済申立てを棄却する労働委員会の命令の取消訴訟に、使用者を、当該訴訟の結果により権利を害される可能性のある第三者として、参加させるような場合である。また、行政処分に関与した行政庁は、当該処分について資料・知識・経験等を有するが、かならずしも訴訟当事者になるとは限らない。訴訟において、これらの資料等を利用する必要があると裁判所が判断した場合には、当事者もしくはその行政庁の申立てによりまたは職権で、当該行政庁を訴訟に参加させることができる(同法23条1項)。
[本間義信]
他人間に係属する訴訟手続に第三者(参加人)が訴訟行為をなすために加入すること。
参加とは,自己の名においてその利益を守るために(代理と異なる),他人間の訴訟手続で訴訟行為をなすために(この点,証人や鑑定人と異なる),自己のイニシアティブで(この点,当事者の申立てによる訴訟引受けと異なる)行われる。参加人の地位に応じ,当事者参加と補助参加に分かれる。(1)当事者参加 参加人みずから訴訟上の請求をなし訴訟当事者となる参加である。この請求が,従前の手続と併合して審判される。参加人の利益保護ないし審判の統一を実現するための措置がとられている(民事訴訟法47条,52条,40条)。訴訟上の請求が従前の当事者双方に対しなされる独立当事者参加と一方のみに対しなされる共同訴訟参加とに分かれる。前者は,他人間において参加人の権利を害する馴合訴訟が行われていると主張し,または他人間で争われる権利が自己に帰属すると主張する者がこれをなしうる(47条)。この場合は,3人の当事者が互いに対立牽制する関係に立つ(三面訴訟)。後者は,他人間の訴訟の判決の効力を受ける者が,一方当事者に対し同一の請求またはその棄却を申し立て,他方と共同訴訟人となる(最初から共同で申し立てれば類似必要的共同訴訟となる)場合である(52条。〈共同訴訟〉の項目参照)。(2)補助参加 他人間の訴訟の結果につき法律上の利益を有する者が一方当事者(被参加人)を勝訴させるため援助することを目的とする参加である(42条)。補助参加人は,参加時点で被参加人がなしえなくなった行為や被参加人の行為と矛盾する行為をなしえないので,従たる当事者という(45条)。例えば,AB間で土地所有権が争われるとき,Aに土地を売ったCは,本訴判決の既判力を受けないが,A敗訴の場合Aより損害賠償請求を受けるおそれがあるので,Aに補助参加する利益を有する。参加にもかかわらずAが敗訴した場合,敗訴の責任をCに負担させるのが酷な場合を除き,CはもはやAに対し,Bが所有権者であるとの判断を争えなくなる(46条。参加的効力)。なお,参加人が判決の効力を受ける場合でも,彼が当事者適格を有しなければ,共同訴訟参加はなしえず,補助参加をするしかないが,この場合には,参加人に当事者に準じる地位を与えるべきことが,講学上提唱されている(共同訴訟的補助参加)。
訴訟当事者(および訴訟告知を受けた者)が,参加しうる第三者に対して,訴訟が係属しているという事実を通知すること。この者に参加の機会を与えるためのものであり,告知を受けただけで当然に参加人となるのではない。告知を受ける者は,補助参加の利益を有する者であることが多い。告知にもかかわらず,参加しなかった者も判決の参加的効力を受けるから,前例でAはCに告知をすることにより,その援助を期待でき,また敗訴の場合Cに対し有利な立場に立つ(53条。告知が必要とされる例として商法268条)。
執筆者:山本 弘
行政訴訟における訴訟参加の特色は,申立てによる訴訟参加のほかに裁判所の職権による一種の〈強制参加〉が認められている点にある。取消訴訟においては,建築確認処分の取消しを隣人が求めた場合の建築主のごとく,法律関係の実質的な当事者が訴訟の局外に立ったり,また行政処分にさいして処分庁に同意を与えた行政庁のように,被告行政庁以外の行政庁が関係を有しているという事態がしばしば生ずる。そこで,行政事件訴訟法は,訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは,当事者もしくは第三者の申立てまたは職権により,また,他の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは,当事者もしくはその行政庁の申立てまたは職権により,裁判所は,決定をもって,その第三者や行政庁を訴訟に参加させることができると規定している(22条1項,23条1項)。訴訟に参加した第三者には,判決の効力が及ぶほか,判決確定後は,もはや再審の訴えを提起することはできない(32条1項,34条1項)。
執筆者:宮崎 良夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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