(読み)あつらえ

精選版 日本国語大辞典 「誂」の意味・読み・例文・類語

あつらえ あつらへ【誂】

〘名〙
① (動詞「あつらえる(誂)」の連用形名詞化) 頼むこと。特に注文して作ってもらうこと。また、そのもの。
源氏(1001‐14頃)蛍「紫の上も姫君の御あつらへにことづけて物語は捨てがたくおぼしたり」
物事をする時、付ける条件や希望。注文。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上「風入の好ささうな、誂(アツラヘ)のむづかしい所に陣取って」
歌舞伎で、道具鳴物など、定まったものを使わないで、作者役者道具方鳴物師に特別に注文すること。また、そのもの。
※歌舞伎・韓人漢文手管始唐人殺し)(1789)二「東西塗骨障子、蘭間、其外事やうに、此道具誂(あつらへ)有」

あつら・える あつらへる【誂】

〘他ア下一〙 あつら・ふ 〘他ハ下二〙
① 頼む。頼んで自分の思うとおりにさせる。
書紀(720)天武一〇年五月(北野本訓)「或いは其の門に詣りて、己が訟を謁(アツラフ)
落窪(10C後)三「またあつらへたる様(やう)に、かしこの人の集まりたるは」
② 注文して物を作らせる。依頼して物を作らせる。
※宇治拾遺(1221頃)五「仮名暦(かなごよみ)あつらへたる事」
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「焼鍋(やきなべ)を一枚あつらへてくんな」

あとら・う あとらふ【誂】

〘他ハ下二〙 相手に、誘いかける。頼んで自分の思うようにさせようとする。あつらえる。
※書紀(720)履中即位前(図書寮本訓)「刺領巾、其の誂(アトラヘ)たまふ言を恃(たの)む」
※観智院本名義抄(1241)「談 アトラフ〈略〉 アトラフ」

あつら・ゆ【誂】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「あつらう(ふ)」から転じて、室町時代頃から用いられ、多く終止形は「あつらゆる」) =あつらえる(誂)
※百丈清規抄(1462)二「祭文書記にあつらゆるぞ」

あつら・う あつらふ【誂】

〘他ハ下二〙 ⇒あつらえる(誂)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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