(読み)あつらえ

精選版 日本国語大辞典 「誂」の意味・読み・例文・類語

あつらえあつらへ【誂】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 動詞「あつらえる(誂)」の連用形の名詞化 ) 頼むこと。特に注文して作ってもらうこと。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「紫の上も姫君の御あつらへにことづけて物語は捨てがたくおぼしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蛍)
  3. 物事をする時、付ける条件や希望。注文。
    1. [初出の実例]「風入の好ささうな、誂(アツラヘ)のむづかしい所に陣取って」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上)
  4. 歌舞伎で、道具鳴物など、定まったものを使わないで、作者役者道具方鳴物師に特別に注文すること。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「東西塗骨障子、蘭間、其外事やうに、此道具誂(あつらへ)有」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始唐人殺し)(1789)二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「誂」の読み・字形・画数・意味


13画

[字音] チョウ(テウ)
[字訓] いどむ・たわむれる・からかう

[説文解字]

[字形] 形声
声符は兆(ちょう)。兆は卜兆。(や)かれてはげしく裂ける形で、外に強く刺激する意がある。〔説文〕三上に「相ひ(よ)びて誘ふなり」とあり、挑と声義が近い。また(調)とも通じて、調戯の意がある。わが国では「あつらう」と訓み、のち人に物を依頼する意となった。

[訓義]
1. いどむ、さそう。
2. たわむれる、からかう。
3. 佻と通じ、はやい。
4. わが国で、「あつらう」とよむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕誂 アツラフ・コシラフ 〔字鏡集〕誂 アツラフ・コシラフ・ヨブ

[語系]
誂・挑dyは同声。ひとを呼誘し、相挑発することをいう。召di、招tjiは招呼すること。dytjiuは調弄する意で、また声義が通じ、同系の語とみてよい。

[熟語]
誂越誂戯誂撃誂弄

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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